研究課題
本研究の目的は、脊椎インストゥルメンテーション手術に用いるインプラントの耐用年数(寿命)を延長するイノベーションとして、「動的スクリューによるメカニカルストレスに対する衝撃耐久性」と「生体親和性ポリマーによるナノ表面処理による摺動面の耐摩耗性とインプラント表面の細菌付着・バイオフィルム形成抑制効果」を有する長寿命型脊椎固定インプラントを創出するための基礎研究を行うことである。今年度は、以下の検討を行った。1. インプラントの機械的特性の評価:平成29年度に確立した「模擬骨を用いた繰り返し曲げ試験」の試験系にインプラントの試作品を用い、屈曲-伸展モーメント、屈曲-伸展可動域、模擬骨からの引き抜き強度などを評価することで、組立品に求められる力学的特性を評価した。2. インプラントの形状・デザインの検討:平成28年度に作製したインプラントモデル、平成29年度に作製した腰椎モデル、隣接する2椎体をインプラントで固定した状態のCADデータを用い、腰椎の可動範囲をコンピューター上でシミュレーションした。また、インプラント、椎体、椎間板にかかる応力を評価した。3. インプラント表面の細菌付着・バイオフィルム形成抑制効果の検討:インプラント感染の主要起因菌である、バイオフィルム形成黄色ブドウ球菌などを、流動環境下におけるin vitro感染モデルに用いて、システムを構成する材料の表面に予めバイオフィルムを形成させた後、抗菌薬を作用させ、バイオフィルム形成抑制効果とこれに伴う抗生剤の抗菌作用を付着・浮遊生菌数測定、蛍光顕微鏡観察、走査型電子顕微鏡観察などにより評価した。