研究課題/領域番号 |
16K10815
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
川口 善治 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (00262527)
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研究分担者 |
北島 勲 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (50214797)
箭原 康人 富山大学, 附属病院, その他 (60456390) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脊椎脊髄病学 / 脊柱靭帯骨化症 / 骨化関連因子 |
研究実績の概要 |
脊柱靱帯骨化症の病態解明、治療と予防法を探るべく以下の2つの研究を行っている。 1.脊柱靱帯骨化症(OPLL)患者とコントロール(cont)を対象とした臨床研究 本院ではOPLL患者200名を超える登録があり、外来通院・入院加療しているOPLL患者約200名と年齢性をマッチさせたCont患者約200名より採血約10mlと採尿20mlを行い、FGF-23、1, 25(OH)2D、Klotho、カルシウム値、リン値、高感度CRP値を測定する。OPLL患者では全脊柱のCTを撮像し、後縦靭帯、前縦靭帯、黄色靭帯、項靭帯のそれぞれの骨化巣の広がりを検討する。また全患者で性別、BMD、糖尿病歴、家族歴の基礎データを採取し、多方面から骨化に関連する要因を探る。第一段階としてOPLL症患者において高感度CRP値は高値であり、骨化巣の伸展と高感度CRP値が正の相関関係があることが分かった。すなわち骨化巣の形成と伸展には炎症が関わっていることが確認され、英文論文にまとめた。 2.臨床検体(手術時採取した皮膚細胞)を用いたin vitro研究 本院ではOPLL患者の頚椎椎弓形成術が年間約50件ある。倫理委員会にて承認後、皮膚組織を採取・培養し、OPLL患者由来の皮膚線維芽細胞を培養・樹立する。またcontの皮膚線維芽細胞はOPLL以外の患者から採取する。そこで採取した皮膚細胞から骨芽細胞様細胞と軟骨細胞様細胞の作製を試みる。作成した骨芽細胞様細胞ではIn vivoにおける骨形成能の評価を行い、OPLL患者およびcont患者由来の骨芽細胞様細胞の差を検討する。また作成した軟骨細胞用細胞ではIn vivoにおける内軟骨性骨化の評価を行い、上記2群の差を検討する。その上で2つの骨芽細胞様細胞および軟骨細胞用細胞のFGF-23、1, 25(OH)2D、Klothoに対する挙動を探る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度はOPLL患者のリン代謝に注目し、新たに95例の頚椎OPLL患者群(男58人女37人,平均年齢69.2歳)とcont患者群73人(男36人女37人,平均年齢70.6歳)を対象とした。血清と尿を採取し、血清クレアチニン(Cre),カルシウム(Ca),リン(P),アルカリフォスファターゼ(ALP)およびFGF-23値と尿中Cre,Pおよび尿細管P再吸収率(%TRP)を測定し、2群で比較した。また、CTを用い全脊椎のOPLLの広がりを罹患椎体レベル、椎間板レベルで評価し、OS indexとして定量的に表した。上記バイオマーカーとOS indexの関連を検討したところ、血清Cre、Ca値は2群で相違はなく、血清P値はOPLL群で低かった。血清P値とOS indexには軽度の負の相関が認められ、全身性にOPLLが広がっている例ほど血清Pが低値をとる傾向にあった。また血清FGF-23値は、OPLL群で明らかに高値を示した。しかしOS indexと血清FGF-23値には明らかな相関は認められなかった。尿におけるそれぞれの値には、2群間で差はなかった。以上よりOPLLでは血清FGF-23値が高く、血清リン値が低下していた。しかし尿細管P再吸収率には変化がなかった。これらの事実は、OPLLの病態を解明する上で重要な知見であると思われた。
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今後の研究の推進方策 |
1.脊柱靱帯骨化症(OPLL)患者とコントロール(cont)を対象とした臨床研究 これまでの研究からOPLL患者においては、contに比較し高感度CRP値は高いことが分かった。また、OPLL患者では血清リン値は低く、FGF-23値が高いことがわかった。しかし何故OPLL患者で血清リンが低値を取るかはわかっていない。リンは腸管から吸収され、腎で排出される。腸管の吸収にはビタミンD(Vit D)が促進的な役割を担う。今後はVit Dの測定を行い、リン代謝から脊柱靭帯骨化の病態に迫りたいと考えている。またSclerostin and dickkopf-1(DKK1) はWnt/β-catenin signal antagonistsとして注目を浴びている。これらも血清中での測定が可能であるため、同時に検討を行う予定である。 2.臨床検体(手術時採取した皮膚細胞)を用いたin vitro研究 これについては、皮膚細胞の収集をこれまで同様行う予定であり、検体の解析を行うまで厳重に保存する。また将来構想として網羅的オミックス解析を行い、疾患感受性遺伝子を同定する。すなわち遺伝子の発現(トランスクリプトーム)、細胞内全代謝物の網羅的解析(メタボローム)、エピゲノム解析を行い、OPLL患者とcont由来サンプルの網羅的分子情報を取得し、疾患感受性遺伝子の候補を探ることを計画している。現在、共同研究者が海外留学中でサンプルを保存しているものの解析には至っていないのが現状である。
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