研究課題/領域番号 |
16K10816
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
関 庄二 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (00432112)
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研究分担者 |
川口 善治 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (00262527)
箭原 康人 富山大学, 附属病院, 医員 (60456390) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | AP-1阻害剤 / 腰椎椎間板 / 椎間板穿刺モデル |
研究実績の概要 |
【背景】IL-1は、転写因子AP-1を介して椎間板を分解するMMP3,MMP13やADAMTS4,5の発現を上昇させるため、椎間板を分解する。それを抑制する因子として、我々の研究協力者が作成した低分子化合物であるAP-1阻害剤を用いて、in vitroの系で椎間板変性抑制を試みる。このAP-1候補薬(T5224)はヒトへの投与も可能であり、研究協力者である九州大学別府病院の塩澤俊一教授より既に供与されている(Nature Biotech 26;817, 2008)。 【目的】臨床応用を目指してこの候補薬(AP-1阻害剤)をマウスに経口投与させ、椎間板穿刺モデルを用いて、椎間板変性抑制が実際に可能かどうかを検討することである。 【方法】C57BL/6マウス12匹の尾椎に針を刺し、椎間板穿刺モデルを作成する。AP-1阻害薬(T5224)をマウスに経口投与し、実際に椎間板変性が起きるかどうかを単純X線, MRI,Safranin-O 染色で偽薬経口投与群と比較して組織学的に比較検討を行う。 結果:X線像では、4週投与ラットにおいて2群間に差を認めなかったが、8週投与ラットにおいてはT5224投与群のほうがプラセボ群に比べて椎間板高減少が有意に抑制された。MRI T2mappingにおいて、4週投与では、貫通で差を認めず、半分穿刺でプラセボ群に比べT5224群では有意にT2値が高かった。また8週投与では、半分穿刺、貫通のどちらも偽薬群に比べT5224群で有意にT2値が高かった。また疼痛関連の行動解析の結果からこのT5224は疼痛の軽減にも関連していると考えられた。 【考察】今回の結果からT5224は、椎間板の変性抑制効果だけでなく、疼痛改善にも関与していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ、計画は予定通り進行している。研究における準備状況も問題なく、現在のところ実験遂行において明らかな阻害因子はない。
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今後の研究の推進方策 |
【AP-1 阻害薬(T5224)のラット椎間板変性モデルを用いた疼痛関連物質の検索】 現在作成しているラット椎間板穿刺モデルにおいて、疼痛関連行動の改善が認められた。その為、ラット尾椎椎間板穿刺後に逆行性ニューロントレーサーであるfluoro-goldを用いて調べたところその支配神経はS領域の後根神経節にあることが明らかになった。そのため、この後根神経節からmRNAを採取しT5224を投与群と偽薬群でマイクロアレイを用いた疼痛関連物質の比較検討を行っている。
【AP-1 阻害薬(T5224)のラット腰椎椎間板の器官培養における組織学的評価】 C57BL/6マウスの腰椎椎間板を顕微鏡下に、軟骨終板・線維輪・髄核を含む椎間板を一塊として摘出した後、器官培養 (αMEMに6種類の添加因子を入れて維持培養) を行う。この椎間板組織を10 ng/ml のIL-1βで処理すると共に、0, 6, 30, 60 μMのT5224を添加した後に、24時間後に組織を回収し、サフラニンO染色と免疫染色を行う。組織評価にはMasudaらの評価法を用いて行う。また各椎間板からRNAを抽出し、mRNA発現量をreal-time RT-PCR法で評価をおこなう。
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