研究課題/領域番号 |
16K10821
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
萩野 浩 鳥取大学, 医学部, 教授 (80208412)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | サルコペニア / 骨粗鬆症 / 脆弱性骨折 / 大腿骨近位部骨折 |
研究実績の概要 |
1.骨粗鬆症関連骨折発生率と経年的推移の検討:平成29年に鳥取県で発生した大腿骨近位部骨折の全数調査を実施した。同時に、鳥取県内で診断された非定型大腿骨骨折の全数調査を実施し、集計を実施した。今後は年齢階級別発生率の解析を実施し、さらに平成30年発生例の調査を実施し、経年的な変化および海外での発生率と比較し、日本人における近年の発生状況を明らかとする。 2.骨粗鬆化とサルコペニア早期予知ツールの開発:地域住民約300例の運動機能および筋量・骨量に関する縦断研究を実施し、その経年的推移を検討した。さらに骨関連マーカー(TRACP-5b、血清スクレロスチン)、筋関連マーカー(ミオスタチン、IGF-1)の測定を実施した。加齢との関係では、男女ともに高齢になるにつれて筋量と筋力の低下を認めた。一方、血清ミオスタチンは、年代間で有意な差を認めなかった。血清スクレロスチンは骨量と関連し、低骨量ほど低値であった。多変量解析の結果ではスクレロスチンに性別が関連、年齢、骨量と正の関連を認め、TRACP-5bに筋量,、歩行速度、骨量が負の関連を認めた。 3.脆弱性骨折予防の取り組み:脆弱性骨折の治療を実施した症例を対象に、コーディネータ(骨折リエゾン)による二次骨折防止のための介入を実施した。平成29年度には147例の1年間の介入が終了した。 4.新規骨粗鬆症治療薬の動物関節炎モデルでの有用性:新規骨粗鬆症治療薬であるカテプシンK阻害薬のCIA関節炎モデルラットでの検討では、リウマチモデル動物の関節内骨びらんの減少が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.骨粗鬆症性骨折の発生率の経年推移調査:大腿骨近位部骨折の年齢階級別発生率は加齢とともに上昇し、80歳以降に指数関数的に上昇していた。非定型大腿骨骨折調査の実施・解析は計画通りに進行している。 2.平成29年度の地域住民高齢者の運動機能調査が計画通りに実施された。また28年度に採取した検体の血中・尿中マーカーの測定を実施した。 3.二次骨折予防の前向きランダム化比較試験は、1年間の介入が実施され、ドロップアウトは5%以内に収まっている。 4.関節炎モデルでの新規骨粗鬆症治療薬の骨びらんに対する有効性が明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
1.骨粗鬆症関連骨折発生率と経年的推移の検討:平成30年度に鳥取県で発生した大腿骨近位部骨折の全数調査を継続する。同時に、鳥取県内で診断された非定型大腿骨骨折の全数調査を実施し、集計を実施する。3年間の調査データから、大腿骨近位部骨折の経年的な変化および海外での発生率と比較し、日本人における近年の発生状況を明らかとする。さらに、非定型大腿骨骨折の発生率を明らかとする。 2.骨粗鬆化とサルコペニア早期予知ツールの開発:平成30年度にも地域高齢者の運動機能および筋量・骨量に関する縦断研究を実施し、長期間の推移を明らかとする。平成28年に測定した骨関連マーカー、筋関連マーカーとの長期経年推移の関連性を検討する。さらに、ビタミンD(25(OH)D3)、ペントシジンなど、骨質関連マーカーの測定を予定している。 3.脆弱性骨折予防の取り組み:2年間にわたりランダム化比較試験を実施し、二次骨折防止のためのコーディネーター介入効果を検討する。 4.新規骨粗鬆症治療薬の動物関節炎モデルでの有用性:骨の解析に加えて、関節内での骨破壊、滑膜増殖に関する細胞レベル、遺伝子レベルでの検討を行う。
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