研究課題/領域番号 |
16K10826
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
茂木 正樹 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (20363236)
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研究分担者 |
堀内 正嗣 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (40150338)
閔 莉娟 愛媛大学, 医学部附属病院, 助教(病院教員) (80726175)
岩波 純 愛媛大学, 医学系研究科, 助教 (90624792)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | サルコペニア肥満 / 異所性脂肪沈着 / 微小血管障害 / 筋再生 / 筋萎縮 / 炎症細胞 / 糖尿病 / 細胞分化異常 |
研究実績の概要 |
これまでの我々の研究では、筋障害性薬剤を投与することで筋再生を誘導するモデルを用いることにより、糖尿病マウスでは筋再生がうまく起こらず、筋肉内に存在するfibro-adipocyte progenitor(FAP)細胞の異常分化が誘導され、脂肪組織に分化することで筋肉内異所性脂肪沈着が誘導され「サルコペニア肥満」を起こすと考えられ、このメカニズムを基盤として検討を進めてきた。 FAP細胞が血管周囲に多く存在することから、糖尿病に伴う微小血管障害の関与を疑い、大腿動静脈を結紮することによる下肢の虚血処置を行うことで、筋障害性薬剤による筋再生を誘導しなくても、また糖代謝の異常がない野生型マウスにおいても筋肉内異所性脂肪沈着が起こりうることが示唆されたことから、糖代謝の異常だけでなく、糖尿病に伴う微小血管障害がこうした異常分化を誘導していると仮定し、抗血小板薬投与による微小血流障害予防効果があるかについて検討を行った。しかし、アスピリンやシロスタゾールの一般的な投与量で経口投与した後の薬剤性の筋肉障害誘導では、微小血管の出血による影響のためか、筋肉内への血球系細胞浸潤による炎症が惹起され、異所性脂肪沈着の抑制効果は認められなかった。 薬剤の少量・長期投与も検討したが、極微量になり効果の比較が難しいことから、微小血管障害の予防による効果を検討するのは現時点では難しいと考えた。そこで、筋再生能の低下がFAP細胞の分化誘導を促すことから、筋再生の低下に伴う免疫・炎症性細胞の変化に着目した検討を進めることとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糖尿病マウスで誘導される異所性脂肪沈着の原因に血管障害の関与を考えて、抗血小板薬の投与の効果を期待したが、期待した効果が認められなかったことから、血管障害を改善することによる効果を目指すのではなく、血管障害や糖代謝異常による筋障害後の筋再生の低下が筋肉内のFAP細胞の分化異常を誘導することに着目して、筋肉量の減少自体が全身性にもたらす影響があると仮定してそのメカニズムを探索する。 具体的には筋再生の低下を筋肉量の低下に置き換え、筋萎縮の誘導によって免疫系細胞の変化や炎症反応の惹起が起こるかについての検討を進める。そのために、坐骨神経切断により筋萎縮を誘導して筋肉量の減少を起こし、それに伴って血中や筋肉内組織中での免疫細胞や炎症性細胞の変化が誘導されるかどうかを検討する。このように筋再生能の低下自体がFAP細胞の異常分化を誘導するメカニズムの解明に力点を置く。 上記の結果については論文等による公表はまだ行っていない。
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今後の研究の推進方策 |
今年度が最終の研究期間になることから、これまでの進捗状況と新たに進める検討について論文公表する方向でデータをまとめる。 また、過度の運動負荷マウスにおける筋障害の助長とそれに伴った異所性脂肪沈着の可能性についての実験を開始する。 坐骨神経切断により筋萎縮を誘導したマウスや大腿動静脈を結紮することにより下肢の虚血処置を誘導したマウスも用いて、サルコペニア肥満の予防に向けた適度な運動負荷についての検討を進めていく。
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