研究実績の概要 |
脊髄損傷に対して、損傷部位近位部の肋間神経を、損傷部位をまたぐように、損傷部位遠位の脊髄内に移行し、損傷部位の近医と遠位を橋渡しすることによって新たな脊髄のネットワークを作り、運動神経の回路の再構成を促し、運動機能を回復する目的で研究を行った。 肋間神経を移行することにより、運動機能は損傷後3週目からcontrol群に比べて有意に改善し、8週目には有意な差をもって回復した(BBB score: control群10.6+/-0.86, 肋間神経移行群18.8+/-0.3(mean+/-SEM))。 組織学的に、移行した肋間神経細胞にトレーサーを注入し、移行部位での検討を行った。脊髄内への肋間神経進展は認められたが、新たなネットワークが作られているかはテクニカルな問題により不明であった。 脊髄内に肋間神経が進展していることは判明したので、肋間神経移行した移行群と、移行した後に肋間神経を切断したvehicle群を用いて(n=3ずつ)、移行後3週目で肋間神経細胞を採取してマイクロアレイによる解析を行った。マイクロアレイ解析では、238の有意あるmRNAの変動を認めた。DAVIDを用いてパスウエイ解析を行い、軸索進展に関わるmRNA6種類を同定した。 本研究では、1,肋間神経移行により脊損部位遠位で肋間神経の進展が起こること、2,肋間神経を移行することにより、移行した肋間神経細胞体で軸索進展のmRNA上昇が促されることが分かった。これらのパスウエイを増強することによって、脊損後の運動機能回復が見込める可能性が示唆され、今後の脊髄損傷治療開発の一助になると考えられた。
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