研究課題
多血小板血漿(PRP)は、自己の末梢血から血小板を濃縮して精製される血漿である。PRPに含まれる高濃度の成長因子や接着因子が組織損傷に作用し、組織修復過 程を促進することが報告されており、歯科領域や形成外科領域、整形外科領域など幅広い分野で臨床応用され、その治療効果が報告されている。骨粗鬆症に伴う骨折は近年の高齢化社会において増加の一途をたどっているが、骨脆弱性や骨質の問題から骨癒合が遷延したり、偽関節に至ることがある。そのため、高齢者が強い疼痛や麻痺に悩まされ、活動性が著しく低下し、生命予後さえも短縮することがある。本研究では、骨折の治療にPRPを役立てることを目的としている。治療モデルは長管骨や頭蓋骨の骨折モデル、骨欠損モデルなど 様々なものが報告されているが、骨粗鬆症が骨折治癒過程に及ぼす影響はモデルにより様々で結果が異なっている。現在、椎体骨欠損モデルの作成を終了し、骨欠損部にそれぞれPRP含浸ゼラチンβ-TCPスポンジ、PBS含浸ゼラチンβ-TCPスポンジを留置した2群と何も留置しないSham群を作成し骨形成について検討を行なった。椎体形成術後8,12週でPRP含浸ゼラチンβ-TCPスポンジ群において著明な骨形成を認めた。また、上記に加えて、組織学的評価と生体力学的評価を施行した。椎体形成術後8,12週でPRP群で椎体と連続した新生骨の形成、増生を認めた。PBS群では新生骨を認めたが、わずかであった。TRAP/ALP染色では、PRP群で4週からTRAP陽性の破骨細胞が出現した。PBS群では破骨細胞を認めたが少数であった。生体力学的評価では 3群間で最大破断強度に有意差を認めなかったが、PRP群の剛性がPBS群、無処置群と比較して有意に高値であった。