研究課題/領域番号 |
16K10833
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
岩崎 博 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (70438274)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脊椎脊髄病学 / 腰椎 / 腰部脊柱管狭窄症 / 責任高位診断 / 硬膜外内視鏡 |
研究実績の概要 |
腰椎手術治療戦略において神経障害高位を正確に評価することは重要であるが、画像上多椎間に神経圧迫がある場合の責任高位を評価することは現代においてもまだ完全とは言えない。そのためどうしても画像的に神経の圧迫のある部位に手術操作を加えることが多く、不必要な手術が追加され、医療費がかさんでいる可能性は否定できない。 よって長期にわたり解決不可能であった腰部脊柱管狭窄症の真の責任高位診断を実現することが必要である。本研究の最終目標は、これを解決するために、電気生理学的機能診断の経験と新しいレンズ開発技術を融合させることにより電極付硬膜外内視鏡を開発作成することである。 平成29年度は引き続き①電極付硬膜外内視鏡の開発②脊椎手術大規模データベースの作成の2本柱を研究計画として打ち立てた。①に関して産業連携体制で開発を計画しているスカラ社と打ち合わせを行い、電極付硬膜外内視鏡の開発に着手することを計画していたが、残念ながら資金面においてまだ着手困難な状態が続いている。資金面の目処が立ち次第具体的な話合いをすすめる予定である。②データベースの作成は進んでいる。既往歴など問診調査項目、痛みやしびれの自覚症状(VAS)、日本整形外科腰痛治療判定基準(JOAスコア)、SF-36、QOL、身体計測値(身長、体重など)、手術高位、手術方法、術後成績などの入力を継続している。 ②のDATAベースから術後成績不良因子などが判明すれば最終目的である真の責任高位診断の一助になると考えている。神経障害高位診断に必要と考えるあらゆる検査法や診断法を検証することが、本研究の成功につながると考えられることから、積極的に各種学術集会に参加し論文を入手して情報収集に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前述した①電極付硬膜外内視鏡の開発は遅れている。今回の開発には、光学機器開発としてスカラ社が開発したGIレンズ(ポリマー樹脂を細長く伸ばしてレンズ機能をもたせたもの)が不可欠と考えている。手始めとしてこのGIレンズを口腔内の吸引管に埋め込むことに成功した。この開発によって画面で口腔内を確認しながら痰などの吸引を正確に行うことが可能となった。本研究には電極付硬膜外内視鏡の開発費は計上しておらず、この吸引管の製品化で得た資金を用いて行う予定である。そのため今回の電極付硬膜外内視鏡の具体的な商品開発に着手できていないのが現状である。 しかしながらこのレンズ付き吸引管の開発技術および製品化へのプロセスより、電極付硬膜外内視鏡も製品化可能であると実感している。
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今後の研究の推進方策 |
①電極付硬膜外内視鏡の開発:スカラ社の資金面の予定が立ち次第具体的な製品化へ着手する予定である。 実施する内容としてはこれまでの計画書でも記述したようにI全体設計、II専用レンズ開発、III専用電極開発、IV既存カメラとの接続コネクタ開発、Vタブレットなどへの通信開発(スカラ社に同様の製品が開発されている)、VI試作品の性能。安全評価(動物実験など)、VII電極付硬膜外内視鏡の有用性・安全性の評価、VIII先行特許・意匠調査、IX薬事申請などが必要となる。スカラ社との産学連携体制で開発・製品化を行う計画である。 ②引き続きデータ入力を継続し脊椎手術大規模データベースを完全なものとする。(既往歴など問診調査項目、痛みやしびれの自覚症状(VAS)、日本整形外科腰痛治療判定基準(JOAスコア)、SF-36、QOL、身体計測値(身長、体重など)、手術高位、手術方法、術後成績など)このデータベースも臨床的価値が高く責任高位診断だけでなく多様な解析が可能であると考えている。これらから導きだした解析結果を国内・国外学会や論文など多方面に発表することが重要であると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
スカラ社との電極付硬膜外内視鏡の開発が遅れていることより、論文や学会などの成果の発表を行うことができなかった。前述のごとくあらゆる関連情報を収集するために多くの学術集会に参加し、教科書や論文の取得を予定より多く行った。その結果その差額分の次年度使用額が生じた。 引き続き情報収集を継続し、2つめの計画であるデータベースからの情報発信を考えている。
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