研究課題
和歌山県の山村と漁村に設定したコホートで実施したROADスタディ第3次調査にて、単純X線検査に参加した住民ボランティア1535人(男性503人、女性1032人、平均年齢65±13歳)の全脊柱矢状面レントゲン画像を用いて、頸椎前弯角・胸椎後弯角・腰椎前弯角・Sagittal vertical axis(SVA)・pelvic tilt(PT)・pelvic incidence(PI)を測定した。PIは、男性が平均47.3度、女性が51.4度であった。PTは、加齢に従い増大し、80歳以降では男性20.1度、女性25.5度であった。腰椎前弯角は高齢になるにつれて減少し、80歳以降では男性40.1度、女性43.5度であった。頸椎前弯角と胸椎後弯角は加齢と共に増大がみられ、80歳以降では、頸椎前弯角は、男性23.4度、女性34.8度で、胸椎後弯角は、男性40.1度、女性43.5度であった。SVAも年齢と共に増大し、80歳以降では男性39.1mm、女性51.4mmとなっていた。これらX線パラメーターの中で健康関連QOLに深く関わっているものが、SVA・PI-LL・PTと報告されており、米国ではSVA<40mm, PI-LL<10°, PT<20°が正常と報告されている。しかし、ヒト固有の値であるPIには人種差があり、米国人の正常値を日本人用に用いることの妥当性が以前から疑問視されてきた。また、過去に於いて、日本人のPIは欧米人に比較して小さいとの報告も存在した。しかし、大規模住民コホートを用いた今回の調査では、過去の報告に比較して、PIは男女ともに欧米人と同様に大きいものであった。また、その一方で腰椎前弯角は比較的小さな値となっていた。本研究結果は、今後の本邦における成人脊柱変形治療の貴重な資料となり得る。
2: おおむね順調に進展している
各種画像パラメーターの計測はすでに終了している。腰痛VASや健康関連QOLデータも既に取得済みであるため、データリンケージを行い、統計解析を実施する準備はすべて整っている。
大規模地域住民コホートにて施行した全脊柱矢状面レントゲン写真を用いた矢状面アライメントパラメーター各計測項目(SVA、PI-LL、PT)と腰痛の有無との関連性を評価し、日本人の矢状面アライメントの正常値を算出する。また、ADL・QOL障害発生リスクのカットオフ値を算出する。得られたカットオフ値を用いて、脊柱後弯症の定義をおこなうとともに、一般地域住民における疫学的実態(性差、年齢差、地域差)を明らかにする。また、全脊柱MRIデータとの照合を行い、原因別分類(筋原性、椎間板性、骨性)も試みる。
予定外の画像再検査に次年度費用を繰り越したが、実費用が予想外に低くすんだ事がことが理由である。
次年度に学会での成果報告予定が2件あるので、旅費に充当する予定である。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
大阪臨床整形外科医会会報
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