研究課題
ヒトにとって理想の脊柱矢状面アライメントを解明するために、腰痛のない一般地域住民の各年代別 PI-LLミスマッチを男女別に調査した。その結果、男女とも加齢とともにPI-LLミスマッチは増加し、腰痛のない理想のPI-LLミスマッチは、年齢層によって変化することが判明した。この事実から、加齢による後弯の進行は骨量、筋量、動作に適合した合目的な変化であることが示唆された。一方、実臨床の現場に於いて、脊柱後弯症の外科的治療を立案する際に最も重用されているのは、SRS-Schwab分類である。この分類の中で、Schwabらは、脊柱後弯変形症例の矯正目標を、PI-LLミスマッチが0±10度以内であることが理想であると報告している。しかし、本研究の結果からは、腰痛のない青壮年のPI-LLミスマッチは、Schwabらのフォーミュラに合致するが、高齢者の場合は一致せず、10±10度前後のプラスバランスに移ることが判明した。欧米における脊柱後弯変形の手術症例は、青壮年が大多数であるために、Schwabらのフォーミュラを採用することに妥当性があるが、本邦における手術治療の対象は高齢者が中心である。よって、本邦で手術計画を立案する場合は、欧米で広く採用されているSchwabらのフォーミュラを無条件に採用するのではなく、本研究から得られた各年代別の理想とされるPI-LLミスマッチを参照にすることが望ましいと考える。
2: おおむね順調に進展している
各種画像パラメーターの計測は既に終了している。腰痛VASや健康関連QOLデータも既に取得済みであるため、データリンケージを行い、統計解析を実施する準備はすべて整っている。追加検討項目のデータ取得に関する同意も地域住民から既に取得している。
脊柱後弯変形をきたす原因と考えられている、1.筋原性、2.椎間板性、3.骨性の3要素の疫学的実態を把握し、その危険因子を解明することで、後弯変形進行の予防方法を講じることを目的として研究を推進する。
(理由)人件費が医局講座費から捻出できたため。(使用計画)次年度の検査費用に繰り越させて頂きます。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件)
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