前年度までの研究にて、骨格筋特異的Ire1 alpha欠損マウスの骨格筋組織では、筋繊維の萎縮が起きていることが観察されていた。また筋委縮に関与していると考えられているfoxo1遺伝子の発現を確認してみたところ、foxo1遺伝子の発現が野生型のマウスと比較して有意に増加していることも確認されていた。また、免疫組織化学的解析から、筋組織では筋小胞体と小胞体ストレスセンサーの存在する小胞体は明確に区分けされていることも強く示唆されていた。以上のような実験結果を基に、小胞体ストレス応答経路のうちの一つであるIRE1alpha-XBP1経路は、筋繊維の保全のために特化しており、ストレス刺激により活性化を受けると、foxo1の働きを転写レベルで抑制し、筋繊維の委縮を防止する働きがあるのではないかと予想された。そこでfoxo1遺伝子とその周囲のゲノム構造を探索したところ、転写開始点の上流にXBP1結合様配列の存在が複数確認された。IRE1alpha-XBP1経路によるfoxo1遺伝子の転写調節について検討をおこなうために、foxo1遺伝子のプロモーター領域とXBP1を用いてレポーターアッセイを行い、XBP1によるfoxo1遺伝子の点転写調節機能の確認を行った。その結果、仮設とは異なりXBP1はfoxo1遺伝子の転写を有意に活性化することが確認された。今後、この詳細を明らかにするため、XBP1と共役して機能する因子の探索が必要と考えられる。
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