研究課題/領域番号 |
16K10839
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
渡辺 雅彦 東海大学, 医学部, 教授 (40220925)
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研究分担者 |
隅山 香織 東海大学, 医学部, 講師 (20433914)
加藤 裕幸 東海大学, 医学部, 講師 (40348678)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脊髄損傷 / インフラマソーム / GLP-1受動体作動薬 / 小胞体ストレス |
研究実績の概要 |
我々は損傷脊髄における小胞体ストレス誘導性アポトーシスに着目し研究してきたが、細胞死を誘導する新たな経路としてインフラマソームを介した細胞死も注目されており、 小胞体(ER)ストレスによるインフラマソームの活性化も報告されている.損傷群におけるインフラマソーム構成蛋白の発現は、Western blotにおいて非損傷群に比べて、損傷後1, 3, 7日において有意に高値を示した*.損傷強度による差は認めなかった.損傷後1,3,7日のOPCにおけるNLRP3, ASC, Caspase-2の発現率は,二重免疫染色において損傷群が非損傷群と比較し有意に高かった*. TXNIPの発現は,損傷後1日目と3日目において、LI群HI群の両群において有意に高値を示した. また近年、糖尿病薬として普及しているGLP-1受容体作動薬であるエキセナチドは、インスリン分泌能の改善に加え、アポトーシス抑制作用が報告されており、その要因としてERストレス応答能の改善がある.そのため、脊髄損傷後に対してのGLP-1受容体作動薬の有効性とERストレスへの影響を調査した.胸髄圧挫損傷モデルを作成し,脊髄損傷のみのコントロール群,損傷直後と7日後にエキセナチド10μgを皮下注射した群と Sham群を比較検討した.損傷前後での血糖値の測定,後肢機能評価をBBBスコアで行った. Western blot,免疫染色で小胞体ストレス関連蛋白の発現を比較した.エキセナチド投与群は7日以降,コントロール群と比較し有意にBBBスコアの改善を認めた*.低血糖は発生せず,3群間で血糖値に有意差はなかった.Western blotでは3日でGRP78発現量が有意に増加し、 14日でCHOP発現量が有意に減少し,免疫染色で同様の結果が得られた*. *: p<0.01
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
損傷脊髄においてインフラマソーム構成タンパクの発現は、亢進しており、損傷強度が大きくても、小さくても、インフラマソームは活性化されるものと考えられた.また、細胞種ごとの比較では、OPCではインフラマソーム構成蛋白の発現が高く、アストロサイトでは発現が低値であった.我々はこれまで、OPCは小胞体ストレス応答に対し、脆弱性があることを示してきたが、OPCはインフラマソームを介した細胞死に対しても脆弱性を有し、またアストロサイトはインフラマソームを介した細胞死に対して抵抗性があると考えられた.脊髄損傷においてもERストレス経路とインフラマソーム経路の関連性が示唆された.この結果は、ER ストレス経路を抑制することにより、インフラマソーム経路の細胞死も抑制できるという可能性を示唆している. GLP-1受容体作動薬であるエキセナチドは、ER ストレス経路に作用してOPC、アストロサイトにおいてアポトーシスの抑制を行い、後肢機能を改善する事が示唆された.エキセナチドの作用はOPC、アストロサイトにも作用すると考えられた.エキセナチドの細胞保護作用は小胞体ストレス応答の増強だけでなく、ミトコンドリア細胞死の経路の報告もあり、様々な作用がある可能性がある.インフラマソームの関与に関しても今後解明の必要があると考えられた.
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今後の研究の推進方策 |
GLP-1受容体作動薬はマクロファージの分化、誘導に関わるという報告が他分野であり、損傷脊髄でのその作用機序に関して検討していく予定である.またGLP-1受容体作動薬によるインフラマソームへの影響も検討していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
理由 購入試薬の納入が間に合わなかったため
使用計画 試薬が納入される予定である
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