研究課題/領域番号 |
16K10841
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
遠藤 健司 東京医科大学, 医学部, 講師 (90266479)
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研究分担者 |
山本 謙吾 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (10246316)
澤地 恭昇 東京医科大学, 医学部, 助教(特任) (20571152)
鈴木 秀和 東京医科大学, 医学部, 講師 (40317871) [辞退]
小坂 泰一 東京医科大学, 医学部, 講師 (10328213)
西村 浩輔 東京医科大学, 医学部, 助教 (80516047)
松岡 佑嗣 東京医科大学, 医学部, 助教 (50408126)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 椎間板性腰痛 / 神経成長因子 / 細胞外基質分解酵素 / 細胞内情報伝達 / DUSP-1 |
研究実績の概要 |
近年,椎間板性腰痛の分子機構が明らかになり,椎間板の変性に伴い,疼痛伝達をする神経線維が椎間板内側に侵入し,さらに疼痛感作が行われることが慢性腰痛の病態の1つであると考えられている.一方,我々は腰痛治療に汎用される COX-2阻害剤が椎間板変性および神経侵入をむしろ促進させ,逆にPGE2がこれらを抑制することを見出した.本研究の目的は,椎間板性腰痛に関わると考えられる細胞内情報伝達経路(MAP kinase)を抑制的に制御するDUSP(dual-specificity phosphatase)-1 に着目し,椎間板性腰痛の病態形成に関わる細胞外基質分解酵素および神経成長因子(NGF)発現への関与を明らかにし,慢性腰痛の予防,慢性腰痛に対する薬学的治療の可能性について検討することである. 当該年度は,炎症刺激により活性化されるMAP kinasesのサブタイプであるERK, p38およびJNKのどの経路が細胞外基質分解酵素およびNGF発現に関わるかを明らかにするために,それぞれのMAP kinaseの阻害剤を用いて検討した.その結果,炎症刺激であるIL-1により処理後20分から30分をピークとしたERK, p38およびJNKのリン酸化が観察され,細胞外基質分解酵素(MMP-1およびMMP-13)発現は,p38およびJNK阻害剤により抑制され,NGF発現はp38阻害剤により抑制された.これらの結果から炎症刺激により誘導される細胞外基質分解酵素およびNGF発現に,p38経路が共通に関与することが明らかなった.さらに,MAP kinaseの内因性脱リン酸化酵素であるDUSP-1発現もIL-1により強力に誘導されることも判明した. 今後,DUSP-1をsiRNAによりknock downした細胞系を確立し,DUSP-1の機能的評価を行う予定である.さらにラットを用いたin vivoでの評価を見据え,ラット椎間板細胞を用いて当該年度にヒト椎間板細胞を用いた実験を行い,同様な結果が再現されるか否か検討する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は,ヒト椎間板細胞を用いて,炎症刺激としてinterleukin (IL)-1刺激により誘導される細胞外基質分解酵素およびNGF発現調節におけるMAP kinaseの関与を明らかにすべく,MAP kinase (ERK, p38およびJNK)の阻害剤を用いて検討した.その結果,細胞外基質分解酵素(MMP-1およびMMP-13)発現は,p38およびJNKを介すること,NGF発現は主にp38を介することが明らかとなり,おおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,ヒト椎間板細胞におけるDUSP-1発現をsiRNAを導入することによるknock downを試み,DUSP-1の細胞外基質分解酵素およびNGF発現に対する機能評価を行う予定である. さらに,ラット椎間板性腰痛モデルにおけるin vivoの評価を見据え,ラット椎間板細胞を用いてヒト椎間板細胞で行なった実験結果が再現されるか否かについても検討する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画よりも,効率良く研究遂行がなされたため.
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次年度使用額の使用計画 |
今後は,ヒト椎間板細胞を用いて,siRNAによるDUSP-1のknock down細胞を樹立し,DUSP-1の細胞外基質分解酵素およびNGF発現に対する機能的評価を行う. また,ラット椎間板性腰痛モデルにおけるin vivoでのDUSP-1の評価の実験を見据え,ラット椎間板細胞を用いて当該年度にヒト椎間板細胞で行なった実験結果が再現されるか否かについても検討する予定である.
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