研究課題
近年,椎間板性腰痛の分子機構が明らかになり,椎間板の変性に伴い,疼痛伝達をする神経線維が椎間板内側に侵入し,さらに疼痛感作が行われることが慢性腰痛の病態の1つであると考えられている.一方,我々は腰痛治療に汎用されるCOX-2阻害剤が椎間板変性および神経侵入をむしろ促進させ,逆にPGE2がこれらを抑制することを見出した.本研究の目的は,椎間板性腰痛に関わると考えられる細胞内情報伝達経路(MAP kinase)を抑制的に制御するDUSP(dual-specificity phosphatase)-1に着目し,椎間板性腰痛の病態形成に関わる細胞外基質分解酵素および神経成長因子(NGF)発現への関与を明らかにし,慢性腰痛の予防,慢性腰痛に対する薬学的治療の可能性について検討することである.前年度までに,炎症性サイトカインであるinterleukin (IL)-1により誘導される細胞外基質分解酵素およびNGF発現誘導に関わるMAP kinasesのサブタイプを,各種MAP kinase阻害剤を用いて明らかにした.当該年度は,siRNAを遺伝子導入することでDUSP-1 knock downヒト椎間板細胞を調整し,細胞外基質分解酵素およびNGF発現調節におけるDUSP-1の重要性の評価を試みた.その結果,DUSP-1 knock down細胞において,IL-1により誘導されるMAP kinasesのリン酸化が顕著に増強され,リン酸化期間も延長することが判明した.また同細胞において,IL-1により誘導される細胞外基質分解酵素およびNGF発現が有意に増強されることも明らかとなった.
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関節外科
巻: 37 ページ: 1288-1294