研究課題
本研究は脊髄損傷に対する再生治療の実現化を視野に、治療の障害となっている感覚異常と運動機能の客観的評価法を確立し、病態に関する脳内メカニズムおよびその治療効果をマウスの脊髄損傷実験を通じて明らかにすることを目的とする。具体的に、次世代型機能的MRIを用いて運動および感覚機能ネットワークの機能再構築・代償過程の可視化を目指す。平成28年度は、超高磁場MRIシステム、高感度MR信号受信コイル、計測シーケンスプログラム、生体情報モニタリングシステム、マウス脳テンプレートおよびマウス脳に最適化された機能解析アルゴリズムを事前に整備し、安静時機能結合性MRI解析を用いて、感覚機能障害である神経障害性疼痛モデルマウスの解析を行った。さらに構築された脳活動ネットワークの特性について、数学的手法であるグラフ理論を用いて、定量的な評価を行なった。その結果、術前の健常マウスと比較して、神経障害性疼痛モデルマウスは対側一次体性感覚野の次数および固有ベクトル中心性は有意に低下し、前帯状回皮質のクラスタリング係数および局所効率、視床後外側腹側核での媒介中心性が有意に増加していることがわかった。以上のことから、神経因性疼痛モデルの脳活動は、一次感覚野に連絡する情報量が減少し、前帯状回皮質や視床などのペインマトリックスが複雑なネットワークを構築しているのではないかと考えられた。本内容をscientific reports紙へ投稿し、掲載された。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、計測系の確立、解析プログラムの開発を行い、疾患モデル評価を実施した。
脊髄損傷モデルマウスを対象として、感覚機能ネットワークの解析に加えて、これまで困難であった一次運動野、二次運動野、補足運動野などの運動機能ネットワークを可視化し、行動学的指標などと合わせて、脳内メカニズムを推定する。さらに縦断解析することで脳機能ネットワークの可逆的・非可逆的な変性時期を各種治療法による介入によって明らかとすることができる。本研究成果について国内外の学会にて報告するとともに、国際誌へ論文投稿し、再生医学へ広く貢献する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Scientific Reports
巻: 7 ページ: 1-9
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Journal of Neuroscience Methods
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