本研究は、脊髄損傷に対する再生治療の実現化を視野に、治療の障害となっている感覚異常と運動機能の客観的な評価法を確立することで、病態に関する脳内メカニズムおよびその治療効果をマウスの脊髄損傷実験を通じて明らかにすることを目的とする。具体的に、次世代型機能的MRIを用いて運動および感覚機能ネットワークの機能再構築・代償の過程を可視化する。さらに、この脳機能ネットワークの可逆的・非可逆的な変性時期を各種治療法による介入によって明らかとすることを目指す。 2019年度は、2018年度から引き続き神経活動を直接観察することのできるDiffusion fMRIによる評価系をマウスモデルで実施した。具体的には、単色光刺激時の一次視覚野、上丘、外側膝状体の神経活動を観察し、タイムコース解析を行った。従来のBOLD法と比較して、Diffusion fMRIは領域特異的かつ血行動態に依存しない信号を観察した。 さらに、アストロサイト特異的に作用する薬剤による介入や、電気生理実験により神経活動を観察し、Diffusion fMRIの信号メカニズムと矛盾がないことを確かめた。本内容について、内容をまとめ国際誌へ論文投稿を行った。 本研究により、脊髄損傷モデルの運動および感覚機能ネットワークを可視化し、運動機能ネットワークの弱体化と痛みネットワークの強化を観察する事ができた。本手法は脊髄損傷モデルに限らず、精神・神経疾患の脳活動評価、神経作用薬の薬理試験に役立てる事を期待する。
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