研究課題
1) 生体におけるペリサイトの多分化能の検証:生体におけるペリサイトの細胞系譜を検討するために、タモキシフェンの投与によりペリサイト由来細胞をtdTomatoで標識できるNG2-CreER; Rosa26-tdTomatoマウスを作出した。そして、このマウスの各組織の凍結切片を作成し、各組織におけるtdTomato陽性細胞の分布を解析した。2) ペリサイト特異的発癌変異誘導マウスの作成:ペリサイト特異的にp53を欠損させたマウス(NG2-Cre; p53 flox/floxマウス)を作出したところ、生後14か月までに90%以上のマウスが骨肉腫もしくは軟部肉腫を発症した。形成された骨肉腫のほぼ全てが骨芽細胞型骨肉腫であり、軟部肉腫は平滑筋肉腫様の腫瘍であった。また、骨肉腫を発症したマウスの約30%は肺転移も認められた。一方、タモキシフェンの投与によりペリサイト特異的にK-rasの発現亢進とp53の発現低下を誘導できるNG2-CreER; K-ras flox/+; p53 flox/floxマウスも作出した。このマウスの筋肉内にタモキシフェンを投与したところ、投与部に未分化多型肉腫様の軟部肉腫の形成が誘導された。3) ペリサイトの悪性化に伴う遺伝子発現プロファイルの変化の検討:p53欠損に伴う悪性転化の前後でペリサイトに起こる遺伝子プロファイルの変化をRNA-seq解析にて検討し、肉腫発症に関与する複数のシグナリング経路を同定した。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り概ね順調に研究は進行している。
1) ペリサイト特異的発癌変異誘導マウスの作成と解析:ペリサイト特異的pRb欠損マウス(NG2-Cre; pR bflox/floxマウス)に形成された腫瘍の解析については、平成30年度も継続して実施する。2) In vitroでのペリサイトへの発癌誘導:現在、p53欠損ペリサイト細胞株を樹立中である。平成30年度は、このペリサイト株の形態、分化能、増殖能を検討するとともに、免疫不全マウスの皮下に移植し、肉腫形成能も検討する。3) ペリサイトの悪性化を誘導するシグナル伝達経路の同定:これまでの研究において、肉腫発症に関与する複数のシグナリング経路を同定した。平成30年度は、その中から肉腫発症に特に重要な経路を明らかにするとともに、その経路の活性化もしくは不活化が肉腫の発症や増殖に与える影響を、in vitroおよび肉腫発症モデルマウスを用いた実験を通して検討する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件)
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