骨軟部肉腫のおいては、癌腫で臨床上頻用されるような腫瘍マーカーはほとんどなく、末梢血の解析により、患者の病態を客観的に推察する指標はない。一方で近年、リキッドバイオプシーという血液や尿などの体液を用いた非侵襲的な検査法による悪性腫瘍患者の病態把握が試みられている。本法の一つとして末梢血液中循環腫瘍細胞(Circulating tumor cells : CTCs)の検出が注目されており、癌種を問わず様々な手法が試みられている。我々は平成25年度から27年度に科学研究費助成事業として「骨軟部肉腫における腫瘍特異的融合遺伝子を目的とした血中循環微量腫瘍細胞の検出」について検討し、その有効性について基礎的な結果を示すことができた。その後、臨床検体を用いた解析を継続してきたが、現在の手法では滑膜肉腫の進行期で多発転移を生じている症例のCTCs解析により、定量的RT-PCR法で融合遺伝子が検出されたが、それ以外の症例では検出できなかった。そこで、現在はより効率よくCTCsを回収する手法を試みているところである。一方で、末梢血から融合遺伝子以外のバイオマーカーで骨軟部肉腫の病勢を推測するようなものはないか、様々な検討も重ねている。軟部肉腫(悪性軟部腫瘍)においては、顆粒細胞数やCRP、Y-GTPの上昇レベルが生命予後にも関連することを見出し、臨床的にも病勢の推測に役立つことを見出した。さらに、乳がんや肺がんなどで予後との相関性が指摘されているスタニオカルシン-1の発現について、軟部肉腫の一種である脂肪肉腫で組織学的悪性度と相関があり、良性に比べ悪性で発現が高いことを見出した。
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