研究課題/領域番号 |
16K10851
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
安藤 隆 山梨大学, 総合研究部, 講師 (10377492)
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研究分担者 |
鈴木 良弘 日本大学, 医学部, 研究員 (80206549)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 低温大気圧プラズマ / プラズマ照射液 / 骨肉腫細胞 / アポトーシス / オートファジー |
研究実績の概要 |
低温大気圧プラズマは非侵襲性の新規がん治療ツールとして非常に期待されるものである。いくつかの癌腫(肺癌、悪性黒色腫など)で先行研究が開始され有望であるが、骨肉腫への応用に関しては知見がほとんどない。本研究では自作した大気圧LFプラズマジェット装置を使用し、骨肉腫細胞への抗腫瘍効果を明らかにすることが目的である。細胞はマウス/ヒト骨肉腫細胞株(Dunn, LM8, MG63, HOS)およびマウス/ヒト骨芽細胞株(MC3T3, hFOB)を使用した。細胞増殖抑制をWST assayで、アポトーシスはAnnexin V, 7AADを使用したFACS で、オートファジーはCyto-IDで評価した。プラズマ照射液はマウスおよびヒト骨肉腫細胞株に対し有意な細胞増殖抑制を示した。一方、マウスおよびヒト両者の骨芽細胞株に対する抑制は限定的であった。FACSの解析によりプラズマ照射液で誘導される細胞死におけるアポトーシスの役割は限定的で、ミトファジー、ネクロトーシス類似の様態を示した。Cyto-IDによるオートファジーの解析では、プラズマ照射液は骨肉腫細胞に対しオートファジーを誘導しなかった。また、検鏡による形態学的検討においてもアポトーシス、ネクローシスとも異なる形態を示していた。さらなる細胞死メカニズムの解明が必要であるが、プラズマ照射液は非アポトーシス性細胞死を誘発することで骨肉腫を傷害すると考えられた。このことから、アポトーシス抵抗性を持つ骨肉腫に対する新規治療法の候補となりうると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の申請時の平成 28 年度の計画としては以下のようである。①自作した大気圧LFプラズマジェット装置にてプラズマ照射液を安定に作成する目標に対しては、複数の溶媒での実験を行った。細胞培地であるMEMやリン酸バッファーに対して安定して一定量のプラズマ照射液を作成することに成功している。②マウス骨肉腫細胞、ヒト骨肉腫細胞およびコントロールとしてマウス/ヒト骨芽細胞の培養を行い、プラズマ照射液の濃度と刺激時間の条件を振り、増殖抑制効果をWST assayで確認する予定であった。複数のマウスおよびヒト骨肉腫細胞株に対しプラズマ照射液は有意な細胞増殖抑制を示した。さらにこの細胞増殖抑制効果は、濃度依存性かつ時間依存性であった。一方、マウスおよびヒト両者の骨芽細胞株に対する抑制は限定的であった。③抗腫瘍効果のメカニズムを明らかにするために、上と同様の条件下で、アポトーシス率をAnnexin V-7AADを用いたFACS法で定量した。④また、オートファジーの関与を調べるためにCyto-IDによるオートファジーの解析を施行した。③、④の計画に対しては順調に実験は終了したが、プラズマ照射液の刺激に対してアポトーシスおよびオートファジーの関与は限定的なものであった。①から④までの実験計画は概ね遂行されており、進展状況は順調に進展しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の推進計画としては、In vitroにおいてはさらなる細胞死メカニズムの解明を施行していく。また、In vivoの計画として、ヒト骨肉腫細胞をヌードマウスへ移植し担癌マウスを制作し、プラズマ活性化培養液を投与し、マウスの全生存期間(Kaplan-Meier曲線を統計学処理)、腫瘍の増殖抑制効果(TUNEL法)、転移予防効果(転移巣の病理組織学的手法)を検討する。さらにルシフェリンにより発光する遺伝子(Luc)を導入した高肺転移ヒト骨肉腫細胞株(143B-fluc) (MAT締結済み)をマウスの尾静脈に注射し、肺転移のモニタリングが可能なモデルマウスを作成する。このモニタリングに関してはIVIS Imaging System (PerkinElmer社)による予備的実験(局所への移植)にて良好な結果を得ている。肺転移確認後にコントロールとしての通常培養液投与群とプラズマ活性化培養液群に分け、マウスの全生存期間(Kaplan-Meier法、ロングランク検定にて統計学的処理)、移植部位の腫瘍の増殖抑制効果、転移抑制効果の検討(転移の結節数、大きさ、病理組織による壊死率、免疫染色、TUNEL法による組織内のアポトーシスの検討)する予定である。
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