骨肉腫は腫瘍細胞が類骨あるいは骨を直接生産する悪性非上皮性腫瘍と定義される。10歳台に好発し血行性遠隔転移をきたし予後不良であり、40年前には5年生存率は10-15%にすぎなかった。手術療法の進歩、系統的化学療法の導入によって70%以上の生存率となった。しかしながら、最近10年の生存率の緩やかな伸びと現行の化学療法薬剤の強い副作用が問題となっており、さらなる生存率の改善と副作用の少ない薬剤の開発が必須である。 プラズマは気体を構成する分子の一部または全体が陽イオンと電子に電離した状態を指し、個体・液体・気体に並ぶ、物質の第4の存在状態である。我々は、自作した大気圧LFプラズマジェット装置をマスフローコントローラーによるガス流量の制御が可能となるように改良し、安定したcold PLASMA溶液の作成を可能にした。以前よりプラズマを腫瘍細胞に直接照射し殺細胞効果をみた研究は報告されてきたが、メラノーマなどの直接照射できる腫瘍に限られる。我々を含むいくつかの研究チームは、プラズマを照射した溶液を使用しても抗腫瘍効果があることを報告した。その中で、活性化培養液が常温でも同様の殺細胞効果を示したのは特筆すべきである。 この自作した大気圧LFプラズマジェット装置によりプラズマを培養液に照射して作成されるプラズマ活性化培養液が薬剤抵抗性がん細胞株に対して、がん細胞特異的な殺細胞作用を示すことを明らかにした。この殺細胞効果は活性酸素の関与が示唆されおり、癌細胞のミトコンドリアネットワークを破壊することを報告した。さらに、その殺細胞メカニズムとして、1)アポトーシス抵抗性の癌細胞にオートファジーを強制的に起こさせること、骨肉腫細胞にネクロトーシス様細胞死を誘導することを報告した。 これらの知見は、アポトーシス耐性の悪性腫瘍に対する治療のための新規アプローチとなりうると考えている。
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