研究実績の概要 |
本研究は合成したmiR-143を医薬品として用い、骨肉腫の肺転移予防効果を骨肉腫罹患犬を対象として実施し、生存延長効果と安全性確認を最終目的としている。H28年度はその前段階として、イヌ骨肉腫自然肺転移モデルにおけるmiR-143の転移抑制効果を検証する系を構築するため、(1)イヌ骨肉腫細胞へのmiR-143導入による、浸潤能抑制効果を示す細胞株の同定と(2)イヌ骨肉腫自然肺転移マウスモデルの作製をおこなった。 イヌ骨肉腫細胞株4株(OOS, cHOS, POS, HMPOS)におけるmiR-143発現を定量PCRにて解析したところ、OOSで最も高値を示し、続いてcHOS, POSの順で減少し、HMPOSで最も低値を示した。そこで、この4株に合成したmiR-143を導入し、タイプIコラーゲンコートされた細胞浸潤アッセイキットを用いて解析したところ、OOSを除く3株でコントロール群と比較し浸潤能抑制効果が示された。他方、いずれの細胞においても増殖能抑制効果は無かった。次に、この3株についてマウスを用いたin vivoモデルを作製するため、1x10^6個、3x10^6個および9x10^6個をヌードマウスの膝関節に移植し、原発巣形成及び肺転移巣形成について検討した。最長6週間まで観察した結果、POSおよびHMPOSは、移植細胞数に関わらず原発巣を形成し加えて肺転移を生じていたが、cHOSは原発巣すら形成しなかった。生体イメージング可能なイヌ骨肉腫細胞の自然肺転移モデルマウスを構築するため、膝関節における原発巣形成とその後の自然肺転移を生じさせることができたPOSおよびHMPOSにルシフェラーゼ発現ベクターを導入し、安定した発光を示すクローンを選択した。
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