研究課題/領域番号 |
16K10862
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
國定 俊之 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (80346428)
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研究分担者 |
尾崎 敏文 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (40294459)
藤原 智洋 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (80639211)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 骨肉腫 / 軟部肉腫 / ウイルス治療 / 臨床応用 / 放射線治療併用 |
研究実績の概要 |
テロメラーゼ活性依存的に制限増殖しp53の発現カセットを挿入した腫瘍融解アデノウイルス(OBP-702)を用い、2種類の骨肉腫細胞株(U2OS,、MNNG/HOS)をDoxorubicin(DOX)で持続処理して樹立したDOX耐性骨肉腫細胞が薬剤排出ポンプmultidrug resistance protein 1(MDR1)を高発現していることを確認し、DOX耐性骨肉腫細胞に対するDOXとOBP-702の併用効果とMDR1を介した薬剤耐性克服機序を検討した。in vitroにおいて、XTT assayにより親株細胞およびDOX耐性細胞に対する抗腫瘍効果を比較し、CalcuSyn softwareを用いてcombination indexを算出することにより併用効果を検討した。また、併用治療によるアポトーシス増強効果と薬剤耐性克服機序を検討するために、Western blotでCleaved PARPとMDR1の発現を確認した。さらに、MDR1の抑制がDOXの抗腫瘍効果に与える影響を検討するためにsiMDR1とDOXの併用によるCleaved PARP発現の変化を確認した。in vivoでは、DOX耐性MNNG/HOS細胞マウス皮下腫瘍移植モデルを作成し、DOXとOBP-702の併用効果を検討した。in vitroにおいてOBP-702はいずれのDOX耐性骨肉腫細胞に対しても相乗的な抗腫瘍効果を示した。Western blotではDOXにOBP-702を併用することによりCleaved PARP発現の増強とMDR1発現の抑制を認めた。また、DOXにsiMDR1処理を併用することによりCleaved PARPの発現増強を認めた。マウス皮下腫瘍移植モデルにおいて、併用治療群はPBS治療群と比較して有意に腫瘍増殖を抑制し、DOXおよびOBP-702の単独治療群と比較して腫瘍増殖を抑制する傾向を認めた。これらの結果から、OBP-702はDOX耐性骨肉腫細胞に対してMDR1の発現を抑制し,DOXの抗腫瘍効果を増強した. DOXとOBP-702の併用治療は化学療法抵抗性の骨肉腫に対する有用な治療戦略となり得る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床応用を行うため、悪性骨軟部腫瘍細胞に対する腫瘍融解アデノウイルスの効果を検討する基礎実験は、ウイルスを開発した消化管外科と共同研究を行っている。実際に研究を行っている大学院生を中心に、様々な骨軟部腫瘍細胞を使用し、腫瘍融解ウイルスと放射線治療・化学療法を併用した研究が順調に進んでいる。 しかし、この腫瘍融解ウイルスを使用して行う臨床応用に関しては、プロトコールを作成中であるが、どのような患者さんを対象にするかといったinclusion criteriaに関して、整形外科内だけでなく、ウイルスを開発した消化管外科とも統一したコンセンサスが得られていない。そのため、ウイルス治療臨床応用のプロトコールを現在も引き続き改訂・作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
基礎研究では、引き続き悪性骨軟部腫瘍に対するウイルス治療の効果を検討していく。化学療法との併用療法だけでなく、良好な局所コントロールのためには、特に放射線治療との併用療法の方がより効果的であると考えている。そのため、悪性骨軟部腫瘍に対するウイルス治療と放射線治療の併用療法に関して、重点的に研究を行っていく予定である。 腫瘍融解ウイルスを用いた臨床応用については、食道癌に対する臨床研究が先行しており、骨軟部腫瘍に対してウイルスを使用した臨床試験も比較的スムーズに開始できると考えている。臨床応用が可能となれば、今まででは高い再発率を認めた縮小手術が可能となり、術後機能の温存が期待される。血管や神経などの重要な組織が温存可能となれば、骨・筋肉の術後機能障害が回避でき、QOL向上を達成できる。さらに、放射線治療併用により、抗腫瘍効果の増強も期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
腫瘍融解ウイルスを使用した新しい悪性骨軟部腫瘍の治療法を開発するため、臨床応用に向けたプロトコールを作成する必要がある。臨床試験を行うためには、特にどのような症例を対象にするかを決めることが難しい。そのため、骨軟部腫瘍の治療について議論する国内学会や国際学会へ参加して、情報を収集する予定であった。しかし2016年度では、関連する国内学会へは参加できたが、国際学会への参加が難しく、旅費として予算を計上していた額が次年度へと繰り越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度は、関連する国内学会、国際学会に積極的に参加し、プロトコール作成のための有用な情報を収集する予定である。 また同時に、大学院生を中心として行っている基礎研究についても、できるだけ参加した学会で成果発表を行う予定である。
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