研究課題/領域番号 |
16K10865
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
白石 大偉輔 熊本大学, 医学部附属病院, 医員 (70769512)
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研究分担者 |
藤原 章雄 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 講師 (70452886)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マクロファージ / 腫瘍 / CD163 |
研究実績の概要 |
マクロファージ(Mac)の活性化機構には、古典的活性化経路(M1)とオルタナティブ活性化経路(M2)が存在する。M1/M2 Macは、それぞれに表現形質も異なっており、M1 MacではTLR2やTLR4の発現が亢進し、M2 MacではCD163やCD204の発現が増強する。しかしながら、これらの表現形質が各々のMacの機能に果たす役割については不明な点が多く、特に、ヘモグロビンスカベンジャー受容体であるCD163のM2 Macにおける機能に関しては、ほとんど明らかにされていない。本研究ではM2 Macで誘導されるCD163の腫瘍免疫における役割を調べることで、CD163のガン病態への関わりを解明し、将来的に臨床応用可能なMacの活性化制御に基づく新規治療法の開発を目指している。 本年度は肉腫移植モデルマウスにおけるCD163の腫瘍進展に与える影響について評価したところCD163 KOマウスではWTマウスと比較して腫瘍進展が抑制された。また、WT MacおよびCD163KO Macと肉腫細胞株との共培養実験においても、CD163KO Macでは腫瘍増殖が抑制されたことから、MacのCD163が腫瘍進展に関与していることが明らかとなった。その共培養上清中におけるIL-6およびCXCL2の分泌もWT Macと比較してCD163KO Macとの共培養にて有意な低下が認められ、qPCRを用いた評価でも同様の結果が得られた。さらに、IL-6およびCXCL2は肉腫細胞の増殖を促進し、siRNAにてMacのIL-6もしくは肉腫細胞のIL-6RのKnockdownにより肉腫の増殖が抑制されたことから、CD163がIL-6やCXCL2の分泌に関与していることが示唆された。ゆえに、CD163はMacからのIL-6やCXCL2分泌に関与することで、肉腫の増殖・進展に関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の実験計画における大きな目標としては、マクロファージのCD163の腫瘍増殖・進展に関与する詳細なメカニズムを明らかにすることであった。本研究では、肉腫移植モデルにおけるWTマウスとCD163KOマウスを比較した時のWTマウスにおける腫瘍進展能の増大や、マクロファージとガン細胞との共培養系でのWTマクロファージとの共培養による腫瘍増殖能の増大にCD163が関与していることを明らかにした。つまり、マクロファージのCD163がマクロファージからのIL-6やCXCL2分泌促進に関与し、肉腫のSTAT3の活性化を誘導することで肉腫の増殖・進展に関与していることを明らかにした。また、この現象はマウスマクロファージだけではなくヒト単球由来マクロファージとヒト肉腫細胞での検討でも同様の結果が得られたことから、マクロファージのCD163が新たな抗ガン剤の治療ターゲットになりうる可能性が示唆された。本結果については、学術論文に投稿しリバイス中である。ゆえに、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、CD163の発ガン過程における役割を評価する目的で皮膚の多段階発ガンモデルにおけるCD163 KOマウスの抗腫瘍免疫能を検討する。具体的には、CD163KOマウスとWTマウスの皮膚にDMBAおよびPMAを数ヶ月間塗布することで誘発した多段階発ガンモデルの生存率を比較するとともに、皮膚に形成された腫瘍の重量ならびに腫瘍の肺転移数を比較することで評価する。また、皮下腫瘍および転移巣におけるマクロファージの活性化状態を、マクロファージマーカー(CD68)やマクロファージ活性化マーカー(CD204, CD206, pSTAT1, pSTAT3等)、その他免疫細胞の活性化状態をCD4, CD8, Gr-1等の免疫染色を行うことで評価する。さらに、肉腫以外のガン種におけるCD163の腫瘍進展への影響を評価する目的で、卵巣癌や肺癌移植モデルマウスでの検討も行い、将来的に臨床応用可能なマクロファージの活性化制御に基づくガン治療のターゲット分子としてのCD163の可能性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:当初の予定では、本年度にマウスを用いた皮膚の多段階発ガンモデルでの評価を行う予定であったが、これまでの研究結果についてまとめた学術論文のリバイス実験に時間を要したため、多段階発ガンモデルを用いた研究が行えなかったため次年度使用額が生じた。
使用計画:すでに、学術論文のリバイス実験も終わり、皮膚の多段階発ガンモデルでの検討もすぐに始められるため、次年度の研究実施にあたって支障はない。
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