研究実績の概要 |
【背景】未分化多形肉腫(以下UPS)は化学療法抵抗性の軟部悪性腫瘍であり、その治療は外科的切除が原則とされる。今回我々はUPSに対するHDAC阻害剤であるLBH589の抗腫瘍効果及びその作用メカニズムを検討したので報告する。 【方法・結果】4種のUPS細胞株 (GBS-1,TNMY-1,Nara-F,Nara-H) を使用した。4種の細胞株においてclass1HDACs (1, 2, 3, 8) の発現上昇を認めたが、RNA干渉を用いたclass1 HDACsのknockdownでは細胞増殖能に影響を与えなかった。WST assayでは、LBH589は濃度依存性に細胞増殖を抑制した。LBH589処理によりサイクリン依存性キナーゼ阻害因子であるp21、p27の濃度依存性の発現上昇と、細胞周期停止を誘発した。Western blotではLBH589処理によりγH2AX, cleaved-PARP, cleaved caspase3 の増加とBcl-2, Bcl-xLの減少を認めた。LBH589の作用メカニズムの検討ではNF-KB1遺伝子とそのコードするタンパク質であるp50の発現低下を認めた。 【考察】HDAC阻害剤はエピジェネティックに遺伝子発現をコントロールすることで抗腫瘍活性を呈する薬剤であるが、その作用メカニズムに関しては不明な点が多い。今回我々はHDAC阻害剤がNF-κB経路に及ぼす効果について検討した。NF-κBはp50とRelAからなる二量体であり、悪性腫瘍においては過剰発現していることが知られる。HDAC阻害剤とNF-κB経路の関係については諸説あるが、本研究においてはHDAC阻害剤処理によりp50の発現を低下させることがアポトーシス抑制の解除を引き起こし、抗腫瘍活性を呈している可能性が示唆された。
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