研究課題/領域番号 |
16K10875
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
高木 岳彦 東海大学, 医学部, 講師 (00348682)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 筋電義手 / 上肢切断 / 神経移行術 |
研究実績の概要 |
A.機械側の改良(筋電義手の開発) 母指の対立、他4指の屈伸運動のみで握力、指尖つまみ、指腹つまみ3種の把持姿勢の実現が可能となった。また従来前腕部に設置していたモータをより近位の肘部に持ってきたことで重量負担を軽減させた。さらに全体の総重量を900g(手部:190g、前腕部:380g、上腕ソケット:330g)におさえながらも6動作(手指屈伸、前腕回内外、肘屈伸)行えるように上腕電動義手を開発した。 B.人側の改良(神経移行術の施行) 神経移行術、いわゆるTMR (Targeted muscle reinnervation)を施行し、もともと手指屈伸など末梢筋を支配していた神経断端を残存筋に移行させることにより、移行された神経によって筋を動かし信号を得ることでより直感的に義手を操作できるようにした。具体的には、肘屈曲を司る上腕二頭筋/上腕筋への神経の枝が上腕二頭筋長頭、短頭、上腕筋と3つ存在するため、そのうち長頭を肘屈曲に温存し、残り2つのうち短頭に行く枝を断端正中神経内の手指屈筋群の神経束、上腕筋に行く枝を手関節屈筋群の神経束と縫合させる。また肘伸展を司る上腕三頭筋への神経の枝が上腕三頭筋長頭、外側頭、内側頭と3つ存在するため、そのうち長頭を肘伸展に温存し、残り2つのうち外側頭に行く枝を断端橈骨神経内の手指伸筋群の神経束、内側頭に行く枝を手関節伸筋群の神経束と顕微鏡下に縫合させた。さらに今回SSEP (Somatosensory evoked potential:体性感覚誘発電位)を用いて知覚神経に電気的な刺激を与えて誘発される反応を記録して知覚神経と運動神経を判別させてより詳細に神経線維を選択することを可能とした。このようにして上腕の残存筋群より6動作(手指屈伸、前腕回内外、肘屈伸)の表面筋電位を抽出させて、前述A.に記載した改良筋電義手の操作を可能にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
工学系研究者、リハビリテーション科医師、義肢装具士との連携もとれ、概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
神経移行術を施行した方で針筋電図では術後6ヵ月の時点で6動作の筋電信号が各筋線維で確認された。さらに表面筋電図で詳細な解析を行ったところ乾式センサ4極で施行すると手指伸展、手関節屈伸の微弱な筋電が回外と誤認された(識別率平均56.9%)が、これを湿式センサ8極に変更すると識別率平均97.7%とほぼ1対1対応が可能であった。これは乾式電極の場合筋収縮により皮膚から離れ安定した筋電が得られにくいこと、4極では6動作という多動作への対応が難しいことが挙げられる。今後筋電義手操作を行う際、湿式センサ8極で行う事を検討するが、湿式電極の取り付けが煩雑なことを考えると日常的な使用には現実的でなくなる可能性もある。今後ユーザビリティの見地から適切な方法を検討すべきと考える。 臨床評価では従来の義手にあるような手指屈伸のみの2動作のときより6動作教示の方に特に高さの低い日用品での成功数が上がった。やはり肘関節の動きを持たせることがより多くの日用品を扱うのに適していることを示唆している。 今後より長期の経過と症例数の蓄積によりさらにデータを出していく予定である。その上で筋電センサの適切な配置方法等検討し日常汎用品としての義手開発を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
筋電義手リハビリ支援システム(筋電計測)に使用を考えていた物品である高精度アナログ入出力ターミナル等、筋電義手開発が進み、これを実際に使用するにあたりリハビリテーションに必要な備品が次年度から必要となってくるため。
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次年度使用額の使用計画 |
筋電義手リハビリ支援システム(筋電計測)に使用を考えていた備品である高精度アナログ入出力ターミナル等、筋電義手開発が進み、これを実際に使用するにあたりリハビリテーションに必要な備品への使用を計画している。
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