研究課題/領域番号 |
16K10876
|
研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
西田 淳 東京医科大学, 医学部, 教授 (20198469)
|
研究分担者 |
立岩 俊之 東京医科大学, 医学部, 助教 (00424630)
鎌滝 章央 弘前大学, 医学研究科, 助教 (60360004)
東儀 季功 東京医科大学, 医学部, 助教 (60532322)
三又 義訓 岩手医科大学, 医学部, 助教 (40740717)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 腱・腱鞘間滑走抵抗 / 屈筋腱再建 / 腱鞘再建 / 屈筋腱狭窄性腱鞘炎 |
研究実績の概要 |
平成9年度の科研費で購入して老朽化が進んでいた滑走抵抗計測装置を、平成27年度の科学研究費補助金で更新予定であったが、滑走抵抗計測装置の作成者であるMayo Clinic の技師の体調不良のため更新できずにいた。技師の体調回復を待っていたが、平成28年度になって体調が回復したため滑走抵抗計測装置をMayo Clinicに製作を依頼し、更新することができた。 滑走抵抗計測装置更新に伴い、新たに滑走抵抗計測装置の周辺環境整備を行った。データ解析用のコンピューターを更新し、滑走抵抗装置のキャリブレーションを実施し、装置が実用可能であることを確認した。 また、過年度実施した屈筋腱縫合後の腱・腱鞘間滑走抵抗の犬によるin vivo studyの結果に関して、国際整形外科学会に以下の内容で応募した。 深指屈筋腱を中節骨部の指屈筋腱腱鞘内を通る部分で横切後Kessler変法にて腱縫合を行った後ギプス固定を行い3週後に腱剥離術を加え、以降自動運動を行わせ3週後に安楽死させた群(以下T in vivo群)、3週間固定後に腱剥離を行わず自動運動を行わせ、その3週後に安楽死させた群(以下F群)、3週間固定後に安楽死させて腱剥離を行った群(以下T in vitro群)、対側の21 指のうち7指の腱・腱鞘間滑走抵抗をat randomに計測してコントロール群(以下C群)として、各群の腱・腱鞘間滑走抵抗を測定し、群間比較した。滑走抵抗値は、T in vivo群とC群、T in vitro群とC群では各群間でC群の滑走抵抗値が低かった。T in vivo群とT in vitro群間ではT in vivo群の滑走抵抗値が低かった(p<0.05)。なお、F群では癒着のため滑走抵抗測定ができなかった。腱縫合後に腱剥離を追加することで、より滑走抵抗の少ない腱再建が実施できることが確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、老朽化が進んでいた滑走抵抗計測装置を更新し、滑走抵抗計測装置の周辺環境整備に多くを費やした。キャリブレーションを実施したり、データ解析用のコンピューターの整備等により新たな環境の下で腱・腱鞘間の滑走抵抗の評価が可能となった。しかし、研究費申請を前にして鎌滝章央研究分担者の転勤があり、研究環境に大きな変動があった。このため、現在滑膜細胞の培養実験の実施が可能か否かの検討を余儀なくされている状況にある。 研究期間が4年間であることを鑑みて毎年実験が完全に目標を達成していくと仮定すると、各年度25%ずつ進捗していくことになる。今年度は、滑走抵抗計測装置を更新することができて、研究が継続可能となったことが大きな収穫であり、その分をプラス25%と評価したい。しかし、滑膜細胞の培養実験の具体的な方法を見直す必要があることが明らかとなり、その分はマイナス25%程度と評価されると考える。その分新たな研究テーマを追加する必要があり、以下、今後の研究の推進方策に記載する。なお、滑膜細胞の培養実験に関してはいかにして実現できるかを検討し、実施したい。
|
今後の研究の推進方策 |
滑膜細胞培養の研究は、弘前大学の鎌滝章央研究分担者が実施可能であることを過年度に実験済みでったが、鎌滝章央研究分担者と西田淳研究代表者に過去3年以内に転勤があり、研究環境に大きな変化があったため、具体的な実施には時間を要することが明らかとなった。滑膜細胞培養の研究は、徐々に環境を整えながら実施を考えていく予定である。 このため、研究環境の変化に対応して、新たな研究対象の探索も開始した。 屈筋腱腱鞘炎において、重症例にはPIP関節の伸展不能例が存在するが、その場合手術時に屈筋腱の肥厚と毛羽立ち等の腱の粗造化が観察される。これらの例では浅指屈筋腱の尺側半腱を切除することにより、PIP関節の完全伸展が可能となることが多い。この浅指屈筋腱の尺側半腱切除の影響を、腱腱鞘間滑走抵抗の観点から評価するin vitro studyを本研究に追加したい。併せて、重症屈筋腱腱鞘炎における屈筋腱の肥厚についても3D-CTを用いて評価し、重症屈筋腱腱鞘炎の病態を解明し、臨床で実感される浅指屈筋腱の尺側半腱切除の効果の、基礎的裏付けをしたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
28年度は平成9年度に整備し、老朽化が進んでいた滑走抵抗計測装置の更新を行い、同時に滑走抵抗計測装置の周辺環境整備に多くを費やした。キャリブレーションを実施し、データ解析用のコンピューターの整備等も行って、今後も新たな環境の下で腱・腱鞘間の滑走抵抗の評価が可能であることを確認し、大変有意義えはあったものの、28年度は犬の実験まで至らず、飼料や病理組織学的検索に対する支出がなく、研究費の支出が予算額より少なくなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
29年度には新たに3D-CTによる重症腱鞘炎の評価も追加する予定であり、コンピューターソフトの購入も必要となるため、認められている予算を超過しないように、注意深く補助金を使用したいと考えている。
|