研究実績の概要 |
研究代表者が以前欧米人の大腿骨頭を用いた研究において、健常軟骨細胞と比較して、変形性股関節症(股関節OA)の軟骨細胞でインターロイキン-1b(IL1B)遺 伝子の発現が著明に亢進していいることを確認した。その遺伝子発現調節機構に関して、IL1B遺伝子のプロモーター領域におけるDNAメチル化の関与を解明する 目的で研究を開始した。一方、今回の研究では日本人の股関節OAの軟骨細胞において、IL1B発現に著明な亢進がみられないことが判明した。 このためまず欧米人と日本人のOA軟骨細胞の遺伝子発現パターンの違いを検証した。日本人の非OA大腿骨頭8検体、OA骨頭12検体から核酸を抽出し、マイクロアレイによる網羅的遺伝子解析を行った。さらに過去に欧米人検体で報告されたOA軟骨細胞の遺伝子発現パターンと比較した。解析した全24,460遺伝子のうち,非 OA群よりOA群で発現が上昇したものは888遺伝子,低下したものは732遺伝子であった.OA群で顕著な発現を示した遺伝子はII型コラーゲン (COL2AI) などの細胞 外基質を構成する因子を多く含んでいた.OAで発現が亢進している遺伝子のうち,欧米人の一次性OAと共通しているものは10%のみであった.日本の二次性股関 節OA軟骨細胞で著明な発現上昇を示した新規遺伝子として,DPT, IGFBP7,KLF2が同定された.欧米人OAと共通した有意なpathwayとして,ECM-receptor interaction pathway等が同定された. 上記の結果を論文「A whole-genome transcriptome analysis of articular chondrocytes in secondary osteoarthritis of the hip(PLoS One. 2018; 13(6): e0199734.)」として公表した。
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