研究課題/領域番号 |
16K10883
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
三木 将仁 埼玉大学, 研究機構総合技術支援センター, 専門技術員 (90515066)
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研究分担者 |
森田 真史 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (20112667)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 耐食性 / アノード分極試験 |
研究実績の概要 |
Ti-Ta-Sn合金の原子比率の違いによる耐食性の変化を調べるために,Taを15,19,23 at%,Snを3,6at%の試料を作製しアノード分極試験を行った.Ta23at%のものが,自然浸漬電位が0.05V貴な結果となったが,大きな差異は見られなかった. Snを3,6at%と変化させたときの分極曲線についても差異は見られなかった.また,Ti-Ta-Sn合金を熱処理温度1000℃で焼きなまししたものと,熱処理無しのものを比較した.熱処理についても若干熱処理無しのものが,自然浸漬電位が貴な値となったが大きな差異は見られなかった.細線のTi-Ta-Sn合金と比較材料のNi-Ti,Co-Cr-Mo,SUS316L,Pt-Wのアノード分極試験を実施した結果,自然浸漬電位はPt-W が最も貴な0V(vs. SCE)付近であり,次いでTi-Ta-Sn合金であった.不動態保持電流密度は,Pt-W が低く, Ti-Ta-Sn,Ni-Ti,Co-Cr-Mo,SUS316Lにあまり差は見られなかった.過不動態溶解開始電位は,Ni-TiとSUS316Lは電流密度が急激に上昇した.Ti-Ta-Snは1.16V付近で電流密度が高くなったが,その後すぐに再不動態化して電流密度が一定となった. 伸線加工されたTi-Ta-Sn合金のアノード分極特性に与える表面ひずみの影響を調べるため,線径の異なる3種類の線材(φ0.5mm,0.1mm,0.05mm)にそれぞれ引張試験機で5%ひずみを与えた応力環境下でのアノード分極特性を比較した.ひずみを与えることによっての,自然浸漬電位および過不動態溶解開始電位に対する影響は見られなかった. 以上のことから,Ti-Ta-Sn合金は原子比率や熱処理の有無,表面ひずみによる耐食性への影響は見られなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した当該年度の研究計画通りに,実験を行うことができ,実験データを採取することができた.
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今後の研究の推進方策 |
金属プレート上での細胞初期付着試験を実施する.マウス由来線維芽細胞L929を用い,φ12.8mm,厚さ1mmのTi-Ta-Sn,Ti-6Al-4V,Co-Cr-Mo,SUS316L製プレートを作製して,細胞初期付着試験を行う.これらの試料を24ウエルプレートに各3枚ずつ入れ,L929細胞懸濁液を1ウエル当り1 mLずつ分注する.コントロールは,金属プレート試料を入れていないウエルに細胞を播種する.37℃,5%CO2インキュベータ内で初期付着試験は6,12および24時間培養し細胞をPBS(-)で洗浄後,0.5mLのTrypsin-EDTA液で剥がす.これに0.5 mLの培地を加えて懸濁し,血球計算盤を用いて細胞数を計測する. また,UV照射によるぬれ性と細胞初期接着性を評価する.上記、細胞初期付着試験と同様の方法で実験を行う.Ti-Ta-SnプレートをUVオゾン洗浄表面改質装置で,照射距離10mmで特定の時間紫外線を照射したものと照射していないものとの,ぬれ性および細胞初期接着性の違いを評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
引張荷重試験機を購入する予定であったが,他研究者のものを借りられたため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
当初予定していなかったセルカウンティングキット等細胞実験のための試薬および論文投稿料に使用する予定である.
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