研究実績の概要 |
ラットを用いた先行研究にて、軟骨部分損傷Partial-thickness cartilage defects (PTCDs)を膝関節に作成した場合、幼弱ラットでは自然治癒するが、成熟ラットでは自然治癒が生じないということを明らかにした。本研究ではこれを応用し、より詳細に週齢の影響が持つ自然治癒力を経時的に組織学的に検討した。次いで、この自然経過を指標とすることにより、介入効果の大きさを比較する系とすることにした。さらには介入効果の大きなものについてその治癒機序を解明していこうとするものである。これまでに検討した項目は 1)研究計画に従い、3, 6, 10, 14週齢の雄性Sprague Dawley (SD)ラットの膝関節に対し、100μの深さでPTCDを大腿骨内側顆部軟骨に線状に作成し、先行研究にある組織評価法を用いた評価を施行した。その結果幼弱であればあるほど自然治癒能力の高いことを組織学的スコアで明示できた。 2)次いでこれまでに軟骨の全層損傷に対する有効性がわかっている介入法を用いて、どの程度の治癒促進効果があるかを検討した。3種類の介入(①Mesenchymal stem cells(MSCs)の投与、②Platelet rich plasma (PRP)の投与、③MSCs+PRPの投与)を施行し、①が最も効果が高いことがわかった。 3)最も有効性の高かったMSCsにつき、関節内でどのように分布するかをラベルしたMSCsの関節内投与にて検討した。その結果多くが滑膜に取り込まれることが明らかとなった。一方、PTCDの近傍に集積することはなかった。
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