1.独自に開発したラット部分軟骨損傷(Partial thickness cartilage defects: PTCDs)モデルを3,6,10,14週齢のラット大腿骨内側顆に作成した。モデル作成後1日、1,2,4,12週の時点で経時的に損傷部の組織学的変化を検討した。その結果、1)3週齢ラットでは4週経過時に軟骨が正常組織で修復されていたこと、2)6週齢ラットでは正常類似組織で修復されたこと、3)10週齢、14週齢のラットでは修復が得られず、4週から12週にかけて変性が進行していくこと、がわかった。このことから10週齢以上のラットでは自然治癒が望めないことがわかり、治癒せしめるためには何等かの介入が必要であることがわかった。なお、この過程を評価する組織学的スケールも確立した。 2.次いでこれまでに軟骨修復作用があると報告のある、間葉系幹細胞(MSCs)やPlatelet rich plasma(PRP)を14週齢ラットPTCDモデルの関節内に投与し、介入の効果を評価した。その結果、MSCs投与にて6週齢ラットの自然経過に相当する治癒の得られること、PRPにはあまり効果のないことがわかった。 3.続いてMSCs投与の時期について検討を施行した。同様の実験系にて損傷作成直後と作成後1週、2週で投与する場合を比較した。その結果、MSCsが軟骨修復に働くのは損傷作成時と同時に投与する場合のみであることがわかった。また、MSCs投与をすると滑膜の増生が起こることがわかった。さらには、標識したMSCsの分布を調べたところ滑膜組織に分布することがわかった。 4.MSCsを投与した場合に滑膜に起きる変化が治癒に重要と考えられたため、MSCs投与をした滑膜と非投与の滑膜の遺伝子発現の差異をマイクロアレーにて比較したが、明らかな遺伝子発現の差異は認められなかった。
|