研究課題
脊椎靭帯及び大関節周囲部に生じる異所性骨化症は、発生部位とその病態によっては、四肢麻痺や関節拘縮などの原因となることが知られている。有効な予防および治療法を確立するためには、その発症機構と病態形成のメカニズムを明らかにする必要があるが、その多くは未だ解明されていない。本研究はマウスの踵骨腱切離モデルを用いて加齢・炎症・神経障害に基づく異所性骨化発症の病態理解を進め、培養腱細胞の実験系により、有効な予防および治療法を開発するための基盤的知見を積み重ねた。初年度に検討した野生型マウス(C57BL6/J系統)における踵骨腱切離によって生じる腱内骨化と石灰化評価の知見を応用すべく、脊椎靭帯の異所性骨化を自然発症するSlc29a1遺伝子欠損マウスを導入したが、平成29年度の繁殖にあたり併発した皮膚炎・肥満等により計画は遅延していた。しかしこの間、細胞培養の実験系では腱細胞株TT-D6および趾屈筋腱由来の初代腱細胞の石灰化骨結節誘導アッセイを行い、炎症性サイトカイン、活性酸素、成長因子の影響について検討した結果、TT-D6細胞において過酸化水素に誘導される活性酸素刺激によって腱細胞から放出される因子を介して骨化が誘導されることを明らかになった。そのため平成30年度にはTT-D6細胞に加えて趾屈筋腱由来の初代腱細胞から酸化ストレス刺激によって放出される因子として推定される炎症性サイトカイン、核酸代謝物、成長因子の影響について検討した。またSlc29a1遺伝子欠損マウスを人工授精により繁殖させ、Slc29a1遺伝子欠損マウス由来の趾屈筋腱細胞をもちいてアデノシンの果たす役割について検討した。本遺伝子欠損マウスの腱切離による骨化発症については切離方法に工夫を加え、背部皮膚への熱傷刺激、周辺組織への薬物投与の影響を検討した。
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Journal of Bone and Mineral Research
巻: 33(8) ページ: 1532-1543
10.1002/jbmr.3453