研究課題/領域番号 |
16K10897
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
高橋 伸典 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (20570196)
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研究分担者 |
小嶋 俊久 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (70378032)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 変形性関節症 / ヒアルロン酸 / CD44断片化 / ADAM10 |
研究実績の概要 |
本研究では、関節軟骨細胞の脱分化におけるCD44断片化の意義とICD自体の機能解析を行い、断片化抑制による脱分化制御、更には変形性関節症発生抑制の可能性を探っている。 昨年度までにHCS(ヒト軟骨細胞様細胞株)および牛関節軟骨細胞におけるCD44の断片化モデルを確立し、HMG-CoA還元酵素阻害剤であるSimvastatinによるCD44断片化抑制効果、およびsiRNAによるRNA干渉実験系と阻害剤添加実験系において、ADAM10がCD44断片化に関わる主要なMMPであることを明らかにした。 また過剰な力学的負荷が変形性関節症における軟骨変性に関連することが知られており、メカニカルストレスによるCD44断片化モデルの確立と、各種阻害剤による断片化抑制について主に検討を進めた。ST140(STREX社)を用いた周期的伸展負荷によるCD44の断片化導入は再現性をもって確立された。各種阻害剤の添加実験を行い、メカニカルストレスによるCD44断片化においてもADAM10がその主要なプロテアーゼであることが確認された。 ADAM10により切断されたCD44の断片そのものが、関節軟骨細胞を脱分化導入することが確認するために、牛関節軟骨細胞にCD44-ICD(細胞内断片)を強制発現させると、Sox9をはじめとする関節軟骨細胞特異的遺伝子発現が抑制されることが確認された。同時に変形性関節症モデルマウス(内側半月板不安定化モデル)作製の安定した技術確立を達成した。 今年度はADAM10の関節軟骨特異的ノックアウトマウス(Col2-Cre)に対してDMMモデルを作成して、野生型との相違点に対する検討を開始した。1クールが長期間かかるため、まだ充分には検討を行えていないが、一部のマウスでADAM10ノックアウトによるOA発生の抑制効果が認められており、更に検討を進めていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ADAM10阻害(siRNAおよび阻害剤)によるCD44断片化抑制と脱分化抑制、さらにCD44-ICDの強制発現による脱分化導入効果が確認された。以上からCD44の断片化および産生された細胞内断片(CD44-ICD)そのものが関節軟骨細胞に脱分化作用を及ぼすことが、in vitroで強く示唆された。既にOAモデルマウスを用いてADAM10のOA発生に対する重要性について検討を開始しているが、まだ充分には行えていない。引き続きin vivoの検証系として、変形性関節症モデルマウスを用いた実験を行う必要があるが、既に今年度までにモデルマウスの作成技術が確立されていることから、ADAM10の機能抑制(阻害剤の投与またはノックアウトマウス)が、変形性関節症モデルに対して与える影響についての検証をスムーズに進めることが出来る環境となっている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までにin vitroのデータが揃い、in vivoのデータも一部出つつあるので、来年度はin vivoの検証を中心に進める予定である。CD44の断片化抑制による、変形性関節症モデルにおける関節軟骨変性の抑制効果を実証することが目的となる。具体的には二つのモデルを用いる予定である。一つはADAM10阻害剤の関節内注射による、CD44の断片化抑制モデル。もう一つはADAM10のノックアウトマウスを用いる系である。ADAM10阻害剤を用いる系、ノックアウトマウスを用いる系、いずれに対しても変形性関節症の導入方法は内側半月板不安定化モデルを用いる。 ADAM10のコンベンショナル・ノックアウトマウスは胎生致死であることが分かっており、関節軟骨特異的にADAM10をノックアウトするコンディショナル・ノックアウトマウスを用いる。ただしCol2-Creを用いたADAM10のホモ・ノックアウトマウスでは成長障害と短命を来すことが知られているため、Col2-CreERT2マウスを用いて成長終了後にADAM10欠損を誘導するモデルを使用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)特には断片化CD44(CD44-ICD)の強制発現実験に於いて、多数回繰り返して遺伝子導入実験を行う予定であったが、予想したよりも順調にデータを出すことが出来たため、残金が生じた。
(使用計画)来年度以降も、in vitroおよびin vivoの検証実験を行っていくため、主に物品費として使用する計画である。
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