研究課題/領域番号 |
16K10899
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
滝本 晶 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 研究員 (00378902)
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研究分担者 |
宿南 知佐 広島大学, 医歯薬保健学研究科(歯), 教授 (60303905)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 椎間板 / 細胞外基質 / 転写調節 |
研究実績の概要 |
前年度までに明らかになったPax1欠失マウスの椎間板組織の変化について、胎生期から出生後までを詳細に解析した。その結果、Pax1欠失マウスの椎間板組織において、発現が上昇または低下する分子を特定することができた。また、Pax1欠失マウスでは、出生後の骨格形成の異常についてはほとんど報告されていないため、マイクロCTを利用して体軸骨格全体の構造を解析した。 Aggrecanの発現調節に関与する転写因子の局在が、脊柱組織の形成及び成熟過程でどのように変化するのかを免疫染色によって明らかにした。Pax1との共局在が認められた転写因子については、転写調節における関連性を解析した。 Aggrecanの翻訳開始点の約10 kb上流に存在する発現制御領域について、この領域全体を欠失したマウスをゲノム編集技術により作出し、系統を確立した。このマウス系統において、椎間板線維輪と肋軟骨組織からRNAを抽出し、Aggrecanの発現レベルを解析した結果、本発現制御領域の欠失による有意な変化を確認することができた。 Pax1により発現が調節される遺伝子を対象に、Pax1の結合部位の検索を行った。Pax1の結合が予測されたゲノム領域について、デュアルルシフェラーゼアッセイ、ゲルシフトアッセイ、及びクロマチン免疫沈降法により解析した結果、Pax1及びPax1と同一グループの転写因子であるPax9による直接的な制御を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Pax1欠失マウスにおいて、これまでに報告されていない新規の変化が見出されたため、その変化に関連して上昇又は低下する遺伝子を明らかにした。また、Aggrecanの翻訳開始点の約10 kb上流に存在する転写調節領域全体を欠失するマウスについて、2種類のマウス系統を確立し、1系統については定量的PCRによる解析を完了することができた。Pax1による遺伝子の発現調節については、前年度までに明らかにした領域以外にも、Pax1が結合して転写調節に関与する遺伝子領域の存在が示唆される結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
Pax1と他の転写因子との蛋白質間相互作用を解析することにより、Pax1による遺伝子の発現調節について、これまでに考えられた調節機構以外の可能性を検討する。また、本研究において明らかにしたPax1結合配列はマウスのDNA配列であるため、ヒト及びラット等において該当するDNA配列を用いて、Pax1蛋白質の結合を確認する。 本研究課題を通して得られた結果を検証するため、それぞれの実験について例数を増やし再検討を行う。本研究課題で得られた一連の成果を、学術論文として報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) Pax1欠失マウスの椎間板における特徴的な組織学的変に関連し、発現レベルが変化する分子が明らかになった。このことから、当初予定していた網羅的解析から、Pax1欠失マウスにおける組織学的変化に関わる分子を中心とした解析に変更した。 (使用計画) Pax1欠失マウスの組織学的解析及び本研究において作出したマウス系統を凍結受精卵として保存するための費用に使用する。
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