前年度までの研究成果から、軟骨細胞分化誘導下の椎間板線維輪細胞において、Pax1がAggrecanの遺伝子発現に対して抑制的に作用することが明らかになった。転写因子であるPax1と、Pax1と同じグループに属するPax9は、マウスのAggrecanの転写調節領域に直接的に結合し、その結合部位は、Aggrecanの発現上昇を強く誘導する転写因子Sox9の結合部位と一部重複していた。本年度は、ヒト及びラットのAggrecanの転写調節領域にも、マウスの場合と同様に、Pax1蛋白質が結合することを確認した。また、本年度は、Pax1とSox9の間に、弱い蛋白質間相互作用が存在することを明らかにした。本研究の結果から、Pax1/9とSox9は、Aggrecanの転写調節領域における競合的なDNA結合の他に、転写因子間の蛋白質間相互作用を介して、Aggrecan遺伝子の発現レベルの調節に関わっていることが示唆された。 前年度から継続して、Pax1/9とSox9の結合部位を含むAggrecanの転写調節領域のDNA配列を欠失させたマウス系統の解析を実施し、本マウス系統において、椎間板線維輪及び軟骨組織のAggrecanの遺伝子発現が、野生型マウスと比較して有意に低下することを確認した。従って、Pax1/9とSox9が結合するAggrecanの転写調節領域は、椎間板線維輪及び軟骨組織におけるAggrecanの遺伝子発現に重要な役割を担っていることが明らかになった。 前年度までに、軟骨組織でPax1を異所性に発現するCol2a1-Pax1トランスジェニック(Tg)マウス胚を解析し、軟骨性骨原基のプロテオグリカンの蓄積が低下することを見出した。本年度は、マウス胚の脊柱組織からRNAを抽出して定量的RT-PCRにより解析し、Col2a1-Pax1 Tgマウス胚では野生型マウス胚と比較してAggrecanの遺伝子発現が有意に低下していることを確認した。 本研究で得られた一連の成果を、学術論文としてまとめ、報告した。
|