軟骨組織の主要構成成分としてタンパク質であるコラーゲンに加えて、コンドロイチン硫酸、などのグリコサミノグリカンがある。本研究は、加齢による運動器変性疾患におけるこれらの軟骨組織構成成分変化を質量分析法によって網羅的かつ定量的に詳細に検討することで疾患の病態生理解明と新規治療・予防法開発に資することが目的である。 H30年度は、前年度までに確立した、質量分析によるGAGの定量、コラーゲン、エラスチンのクロスリンクの定量、組織のサーモリシンによる高温での可溶化法の3つを組み合わせて肥厚黄色靭帯の解析を試みた。黄色靭帯はエラスチンを大量に含む組織であるがコラーゲンも存在しており、肥厚においては軟骨化生が起こることが知られているがその定量的解析は行われていない。従来コラーゲンの定量に用いられてきた水酸化プロリンはエラスチンにも存在するため、黄色靭帯の解析においてはコラーゲン量の増減を適切に反映していない可能性がある。そこでコラーゲン、エラスチンのそれぞれに特異的なクロスリンクを測定して、水酸化プロリンとの相関を検討したところエラスチンでなく、コラーゲンに特異的なクロスリンクと正の相関を示すことが明らかになった。このことから過去の論文で用いられている水酸化プロリンの定量はコラーゲン量の変化を反映していると考えてよいが、より特異性の高いクロスリンクをそれぞれのタンパク質の指標として用いることで曖昧さを回避できる。
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