研究課題
平成28年度に引き続き、関節リウマチ患者の末梢血と関節内からリンパ球を採取し、CD4T細胞のサイトカイン産生プロファイルの解析を行った。末梢血に比べて関節内ではIFN-γ、IL-21を産生するCD4T細胞が有意差を持って増加していることが確認された。またGM-CSF産生CD4T細胞も比較的多く認めたが、それらはほとんどがIFN-γ産生CD4T細胞に含まれており、その一部がさらにIL-21も産生しているという状況であった。すなわち関節リウマチ患者の炎症関節内では、末梢血には見られない多機能エフェクターCD4T細胞が浸潤していることが明らかになった。これらの結果は日本リウマチ学会などで発表したほか、英文雑誌上でも報告している(Yamada H et al. RMD Open 2017, 13;3(1):e000487)。現在はこれらの細胞の特徴、特に関節内への浸潤機構を明らかにするため、各種ケモカインレセプターなどの細胞表面分子の発現パターン解析や機能解析を行っている。一方、スウェーデンカロリンスカ研究所との共同研究による、マウスを用いたCD4T細胞の機能解析においては、自己II型コラーゲン特異的CD4T細胞の中でも転写後糖鎖修飾を受けたII型コラーゲン分子に反応するものは胸腺上皮によって免疫寛容が誘導されておらず、末梢で十分なエフェクター機能を発現し、関節炎を引き起こし得ることが明らかになった。本研究結果についても最近、英文雑誌上で報告した(Roposo B et al. Nat Commun 2018, 9(1):353)。
2: おおむね順調に進展している
当初目標である関節リウマチ患者の血液、関節液中のCD4T細胞の特徴を、主にサイトカイン産生パターンにからとらえることについては、現在までの解析でほぼ達成できており、今後は主にその他の分子による機能解析を中心に実験を継続する。ただし、滑膜組織を用いた解析、特に培養実験については、解析サンプル数が充分とはいえず、今後も精力的な継続が必要である。動物実験についても、ほぼ予定通り解析を行うことができている。
基本的には当初の計画通りに研究を推進する。ただし昨年、米国の研究室から関節リウマチ患者の関節内で、T細胞活性化抑制分子PD-1を発現し、かつIL-21産生CD4T細胞が増加していることが報告され(Rao DA et al. Nature 2017 542:110-114)、大きく注目されていることから、今後は我々が解析してきたCD4T細胞群との関係も早急に明らかにしてゆくことが必要となってきた。
研究計画は概ね順調に遂行できているが、比較的高額な消耗品を使用する細胞組織培養実験が、良質な臨床サンプルの不足により、やや計画より遅延しているのが次年度使用額が生じた主な理由である。しかし、次第にサンプルが蓄積されてきたため、当初計画通りに使用する見込みである。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
Nature Communications
巻: 9 ページ: 353
10.1038/s41467-017-02763-y
RMD Open
巻: 3 ページ: e000487
10.1136/rmdopen-2017-000487