研究課題
ラット骨髄由来マクロファージを用いた破骨細胞分化系において、DNAマイクロアレイ法により破骨細胞で高く発現する遺伝子としてHMG(High Mobility Group)関連タンパク質、Nucler protein1(Nupr1)/p8を見出した。このNupr1の骨吸収活性制御における役割を明らかにすることを目的とした。マウスマクロファージ細胞株およびマウス骨髄由来マクロファージを用いた破骨細胞分化系において、RANKL刺激後Nupr1 mRNA、タンパク質発現が顕著に上昇することを確認した。また、蛍光免疫染色において破骨細胞分化のマスターレギュレーターと考えられているNFATc1との共局在を核において認めた。Nupr1プロモーター解析によりNFATc1結合コンセンサス配列を1000ベース上流付近までに7つ認め、NFATc1阻害剤であるFK506投与により用量依存性にNupr1の発現が抑制された。次にレンチウイルスを用いてNupr1発現をノックダウンしたところ破骨細胞形成が抑制され、アポトーシスやオートファジーに関わる遺伝子群の発現に変化が認められた。これらのことからNupr1は破骨細胞分化に重要な役割を持ち、アポトーシスやオートファジーの制御に関わる可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
マウスマクロファージ細胞株、マウス骨髄由来マクロファージを用いた破骨細胞分化系においてもNupr1発現が上昇することを確認した。免疫染色やプロモーター配列解析によりNupr1は破骨細胞におけるNFATc1の新たな標的タンパク質であると考えられた。また、Nupr1ノックダウンによりオートファジーやアポトーシス関連の遺伝子群の発現に変化が認められ、他のNupr1に関する報告と同様、破骨細胞においてもこれらの制御に関わることを示す結果が得られている。
Nupr1ノックアウトマウスを用いた解析を行い破骨細胞分化、骨吸収制御機構における機能解析を進めていく。特にオートファジーやアポトーシスとの関連を中心に実験を行う予定である。また、骨粗鬆症などの疾患モデルを作成し疾患との関連も検討する。
本年度はin vitroの実験が中心となったが、次年度以降にノックアウトマウスや疾患モデルを用いたin vivoでの解析が増え、より多くの費用を要すると考えられるため来年度に使用することとした。
マウスの維持、モデルの作成、染色のための抗体や各種試薬、培養関連器具、培地等に使用する予定である。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
Arthritis Reseach & Therapy
巻: - ページ: -
10.1186/s13075-016-0957-6.
Am J Pathol
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10.1016/j.ajpath.2016.05.005