研究実績の概要 |
日向夏みかんは宮崎県で発生した柑橘類である。古来より柑橘類の果皮は漢方薬の原料として使用されてきた。漢方薬は煎じるので、薬効成分は水溶性の物質であると考えられる。ところが、生薬学では、水溶性成分は同定と構造決定が極めて困難であるため、あえて研究対象から外されてきた傾向がある。我々は、地域の特産物に付加価値を付ける研究を行うという目的から、日向夏みかんに注目し、薬効成分がないかを検索していた。その結果、骨粗鬆症のモデル動物である卵巣摘出ラットに日向夏みかんのホモジネートを強制摂取させると、骨塩量が上昇することを見出した。今回の研究は1) その機序を明らかにすること、2) 活性成分を明らかにすることと、3) 応用として活性成分を強化したジュースでヒトにおいて効果があるかを検討する目的で行われた。 その結果として1) 活性成分はラット破骨前駆細胞から破骨細胞への分化を抑制する以外に、3T3-E1細胞においてosteocarcin, BMP2, RUX-2, type 2コラーゲンなどの遺伝子発現と蛋白産生を刺激することが明らかになった。2) 活性成分に関しては多糖類であることはわかっていたが、最終的にアラビノガラクタンであることが判明した。3) ヒト試験においても、いくつかのパラメーターに変化が認められた。 以上まとめると、日向夏ミカンに含まれるアラビノガラクタンは破骨細胞の再生を抑制するとともに、骨芽細胞にも作用する可能性が示された。骨芽細胞と破骨細胞の両方に作用する物質はあまり知られていないので、骨芽細胞と破骨細胞のクロストークに作用する可能性が考えられ、破骨細胞と骨芽細胞の共培養系を作成し、作用を明らかにする予定であったが、共培養系の実験系の確立が困難で今後の課題が残った。今後の研究を継続する予定である。
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