研究課題/領域番号 |
16K10913
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
小林 正明 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (20254287)
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研究分担者 |
浅井 清文 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (70212462)
永谷 祐子 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (90291583)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 関節リウマチ / グリオスタチン / 滑膜細胞 / チミジンホスホリラーゼ / Sp1 |
研究実績の概要 |
関節リウマチ治療は劇的に進歩し、発症早期からの抗リウマチ薬、生物学的製剤、低分子シグナル伝達阻害剤の導入により、治療は寛解をめざすものになった。しかしながら未だいずれの治療にも反応しない薬剤耐性難治性患者や、炎症が鎮静化されたにも関わらず骨びらんの進行がみられる患者が存在する。我々は、関節リウマチの病態形成にグリオスタチン(GLS)が密接に関与していることを初めて見いだした。本研究ではグリオスタチンのシグナルカスケード制御を関節リウマチ治療へ応用することを最終目標としている。 GLSは、thymidine phosphorylase (TP) 酵素活性を有するが、この酵素活性のみからGLSのもつ多彩な生物学 的作用を説明することはできない。多彩な生物学的作用とは血管新生作用、グリア細胞に対しては増殖阻害作用、 皮質ニューロンに 対しては神経突起伸長および生存維持活性である。最近他施設より滑膜細胞からのTPによってCXCL10が誘導され、TPの骨破壊への関与 も示唆される報告がなされた。 滑膜培養細胞では、TNFなどの炎症性サイトカインによってGLSが誘導される。GLSのプロモーター領域にはSp1 結合部位が7か所あり、このSp1結合部位を阻害することで、TNFによるGLSの発現を制御することが可能となり、GLS発現制御の一端を解明できた。RA患者の関節液中GLS濃度は、おおよそ300 ng/mlであるが、この濃度のGLSを滑膜細胞に作用させることによりmatrix metalloproteinases (MMP)-1、3、9、13を誘導することから、GLSは関節破壊に関与する因子の一つと考えられる。 そこで本研究では関節リウマチの滑膜炎増悪の一翼を担っているGLS発現制御分子機構の解明を目標とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人工膝関節置換術、関節鏡視下滑膜切除術のさいに患者の承諾を得て採取した滑膜を培養し、3から9代継代し形態学的に均一な線維芽細胞様滑膜培養細胞 (FLSs) の樹立、継代維持は安定供給されている。継代したFLSsは免疫組織学的手法にて表面マーカーを 検討し、線維芽細胞様滑膜細胞であることを確認し、細胞の性質が変化ない事を適時確認している。 FLSsでは、TNFによってGLSが誘導されるが、その機序は明らかにされていない。29年度には、TNFによって細胞質内あるいは核内のSp1の発現に変化がおこるかWestern blotを用いて検討した。TNFによるSp1の核内移行の上昇が観察され、これによりGLSが誘導されていると推察された。またnuclear factor-κB (NF-κB)やmitogen-activated protein kinase (MAPK)シグナルの関与も示唆されるため、NF-κB阻害剤(SN50、MG132)、MAPKシグナルのextracellular signal-regulated kinase1 and 2 阻害剤(PD98059)、c-jun N-terminal kinase阻害剤 (SP600125)、p38 MAPK阻害剤(SB203580、SB202190)、蛋白合成阻害剤であるcycloheximideを使用してpretreatment後にTNFα刺激を行い、GLS産生が抑制されるかを検討した。cycloheximideにてGLS mRNAの誘導が抑制されたことより、TNFによるGLSの誘導にはなんらかのタンパク因子の関与が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
関節の構成細胞の一つである軟骨細胞にも着目し、軟骨培養細胞でのGLSおよびMMPsタンパク発現の同定を行う。 抗GLS抗体を用いて軟骨培養の細胞免疫染色を行い、GLSの産生を検討し、TNF-αとSp1阻害剤であるmithramycinにて前処置を行いその影響を評価する。さらにSp1 small interfering RNA (siRNA)を作製し、GLSの産生抑制効果を同様に検討する。Sp1はRAにおける骨軟骨破壊をもたらすMMPsの発現調節にも関与しており、軟骨細胞に豊富に存在するMMPsをSp1干渉にて制御できれば、さらなる抗リウマチ効果が期待される。 Thymidine phosphorylase (TP) 阻害剤 (TPI)を用いた関節炎抑制を試みる。このTPIを用いて、TP酵素活性を阻害することが、RAの病態抑制に有用かを、in vitro、in vivoにて検討する。我々の以前の研究でTP酵素活性を持たないGLSがウサギ関節炎を惹起することを明らかにした。しかしすでに完成された関節炎に対するTPIの効果は検討していなかった。近年TPIを用いた大腸癌の抗腫瘍剤が上市され、その有効性が認識されている。そこでRA FLSsを用いてGLSによって誘導されるVEGFをはじめとした血管新生作用因子が、TPIによって抑制されるかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
29年度の研究実績を英語論文として発表予定であったが、論文作成が遅れ次年度に持ち越した。そのため英文校正費と投稿費用を次年度に持ち越した。 投稿をopen accessとするための費用として計画している。
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