研究課題
ステロイド性骨粗鬆症(GIO)は,長期ステロイド治療の副作用として,性別,年齢に関わらず発症し,骨折のリスクを上昇させる。GIOによる骨折のリスク上昇は,骨密度が低下する以前に生じることが報告されており,骨密度とともに骨強度を規定する骨質劣化が著しいことが予測される。しかしながら,GIOの骨質に関する研究報告は極めて少ない。本研究では,GIOモデルラットを作製し,赤外イメージングならびマイクロCTを駆使しながら,GIOモデルラット大腿骨および腰椎の化学的かつ構造学的な骨質解析ならび骨密度測定を行うとともに,脛骨の力学特性評価を行い,骨強度,骨密度,骨質の関わり合いを検討した。本研究の学術的な特色と意義は,GIOのような骨密度が低下する前に骨折リスク上昇を認める骨について,その骨強度,骨密度,骨質の関わり合い検討しながら骨の評価手法を構築することにある。昨年度は,試料調整法が骨質データに及ぼす影響について検討した。本年度は,これまで得られた骨密度,骨強度,骨質データの相関性について検討しながら,骨の評価手法を構築した。おもな成果は,1)コラーゲン線維配向性を示す赤外二色性イメージと石灰化度,炭酸塩含有率,結晶化度,ミネラル成熟度を示す赤外イメージを比較検討し,GIO大腿骨におけるコラーゲン線維配向性は,石灰化度,炭酸塩含有率,結晶化度,ミネラル成熟度が有意に低値を示す検体においても,顕著な変化が認められないことを学会で報告した。一方,コラーゲン線維配向性が低下している部位は,石灰化度とミネラル成熟度が有意に低値を示すことを国際学会で発表し,論文にまとめた。また,2)骨強度,骨密度,骨質の関わり合いを検討し,大腿骨皮質骨骨膜側の石灰化度と最大応力に正の相関があることを示した。さらに,3)腰椎と大腿骨の骨質劣化について比較し,腰椎の骨質劣化が大腿骨より緩やかであることを示した。
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Molecular Crystals and Liquid Crystals
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10.1080/15421406.2020.1743467