研究課題
関節リウマチ(RA)は、主に手指などの小関節に多発性に発生する関節炎を主徴とする慢性炎症性疾患であり、関節の腫脹や疼痛などから日常生活動作にも支障をきたす。今日、Tumor necrosis factor alpha (TNFα)などの炎症性サイトカインを標的とする単クローン抗体など、様々な生物学的製剤が登場し、臨床応用されるようになってから、RAの治療成績は飛躍的に向上し、患者のQOLも改善するようになった。これらの治療法上の発展から、RAの病態の解明や治療標的の同定よりは、新たな治療法の開発が優先される開発競争の状況となった。一方で、成人発症スティル病などに代表される自己炎症症候群は、RAの類縁疾患ではあるものの、患者数も少ない難病であり、その病態の解明はRAに比べてさらに進んでいなかった。申請者は、成人発症する自己炎症症候群の病態に着目し、新たにアダルトオンセットの関節炎モデルの新規作出に成功した。本モデルは、アダルトにおいて100%の確率で関節炎を発症させることができる新規のマウスモデルで、自己炎症症候群に特徴的な大関節優位の関節炎を発症することを見出している。白血球数の増多や、皮膚症状、肝障害などを伴なうことも自己炎症症候群の特徴と合致していると考えている。現在、このモデルを用いてその病態の解明を進め、複数の治療標的を同定しており、その治療標的としての有用性を検証しているところである。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、自己炎症症候群モデル動物の樹立と治療標的の同定を目指しているが、すでに自己炎症症候群モデル動物については、ヒトの自己炎症症候群と特徴がよく一致するアダルオンセットのマウスモデルの作出に成功している。本モデルでは、大関節炎を発症し、比較的関節炎を発症しにくいとされるC57/BL6バックグランドのマウスにおいても100%の確率で関節炎を発症することを見出している。すべてのマウスで関節炎が発症することから、このモデルを用いた解析はやりやすく、治療標的の同定にむけた解析を行い、すでに複数の治療標的候補の同定に至っている。以上のことから、本研究が概ね順調に進展していると判断できると考えている。
自己炎症症候群は患者数が少ない希少疾患であり、その病態の解明等はまだ進んでおらず、治療法もまだ定まってはいないのが現状である。本研究では、新規の自己炎症症候群モデルマウスの樹立に成功し、すでに複数の治療標的候補分子の同定に成功している。遺伝子改変マウスはC57/BL6バックグランドで作成されることが多く、本モデルはC57/BL6バックグランドのマウスにおいて100%の確率で関節炎を発症することを見出していることから、これらC57/BL6バックグランドで作成された遺伝子改変マウスと本モデルマウスは直接交配が可能である。現在すでに同定した様々な治療標的候補分子の遺伝子改変マウスを全てC57/BL6バックグランドで準備し、自己炎症症候群モデルマウスとの交配を進めているところである。今後は、これらの交配による治療効果を検証し、最も優れた治療標的を決定し、新たな治療法の開発につなげたいと考えている。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 10件)
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