研究実績の概要 |
血管新生に代表されるVEGFはOAに関与し、われわれは家兎OAモデルを用いて抗VEGF抗体の静脈内投与投与や関節内投与による滑膜、軟骨下骨、関節軟骨への多方面にわたる作用により関節全体で良好な修復効果と疼痛改善効果を報告した。 近年、国内で開発され血管新生に関与するVEGFやFGFなどのチロシンキナーゼ受容体に対する阻害薬(mRTKs inhibitor)が甲状腺癌に保険適応された。本研究は経口投与可能なmRTKs inhibitorによる関節軟骨修復効果を検討することである。 家兎片膝OAモデルを作製し、術後4週から7週目までmRTKs inhibitorの経口投与を行い12週で犠牲死した。投与なしのOA(A)群と0.3mg(B)群、1mg(C)群、3mg/kg/day(C)群の4群を作成した。 疼痛を患肢荷重配分比で評価した。術後12週でA群と比しB群とC群で有意に、D群では有意差無いものの疼痛改善傾向にあった。軟骨組織は投与群でsafranin Oの染色性が維持され大腿関節面の軟骨組織を大腿脛骨部(FT)、大腿膝蓋骨部(FP)、Cornerに区分し、OARSI scoreで評価したところ、A群と比しB群のFT, Corner, FPで有意に改善を認め、C群においてもCornerで有意な改善を認めた。滑膜組織はA群で滑膜細胞の多層化、細胞密度上昇、好中球浸潤が著明であり、投与群では滑膜炎所見は抑制され、synovitis scoreで投与群でA群と比し有意に改善を示した。骨棘形成に関してはA群で大腿骨顆部に大きな骨棘形成を認め、投与群では骨棘形成は抑制され、osteophyte formation scoreで投与群で有意に改善を認めた。軟骨組織の遺伝子発現をreal time PCR法で評価したがcatabolic factorは投与群と非投与群で有意差は認めなかった。
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