研究課題/領域番号 |
16K10922
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
油井 直子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (20266696)
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研究分担者 |
遊道 和雄 聖マリアンナ医科大学, 医学研究科, 教授 (60272928)
唐澤 里江 聖マリアンナ医科大学, 医学研究科, 講師 (50434410)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 変形性関節症 / 軟骨細胞 / 半月板細胞 / メカニカルストレス |
研究実績の概要 |
本研究の対象となる変形性関節症(osteoarthritis:OA)は、関節軟骨の変性・摩耗とそれらに引き続いて生じる二次性滑膜炎が病態の中心と言われている。病期の進行に従って関節痛の増悪、骨軟骨の増殖にともなう関節の可動性・支持性の低下をきたし、加齢変化とともに日常生活動作や運動機能が大きく障害される。そこで我々は、OA発症の機序についてヒトの軟骨細胞を用いて研究をしてきた。加齢にともなう軟骨基質の組成変化や、体重増加などのメカニカルストレス、それにともなって誘導される炎症や酸化ストレスの蓄積が軟骨細胞へDNA損傷を引き起こす事が明らかとなり、軟骨変性機序との関連について平成24年から26年度科研費基盤研究の成果として報告してきた。(Yui N.et al.Int J Molecular Science,15(9),14921-14934,2014)(国際変形性関節症学会OARSI2014,2015)。そこで本研究では、よりヒトの生体構造条件に近づけるためにも、膝関節のOAを代表として軟骨組織と半月板組織の関係性に着目して研究を進める事とした。実験サンプリングは、大学の倫理委員会承諾のもと、手術で採取されたヒト関節軟骨組織と半月板組織を用いている。まずはその両者の細胞の違いと変性程度の比較を行っている。半月板細胞の増殖形態と軟骨細胞の増殖形態に微妙な差異があり、部位的な違いが機能的役割の違いと関連している事が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
軟骨および半月板細胞のメカニカルストレス応答機構を解析するためのメカニカルストレス負荷培養実験系を確率すべく装置の開発を進めているが、年度内の装置完成に至っていない。その理由として、骨軟骨一体化組織を用いる計画であるが、現実的に臨床検体採取が極めて少なく入手困難である点がある。また、装置自体一定の温度管理、細胞培養条件(37℃、CO2濃度 5%)かつ滅菌管理が閉鎖空間として必要となるため、閉鎖空間の獲得に難渋している。そのため本年度中は試行錯誤の繰りかえしで多くの時間を費やした。半月板細胞の培養系はほぼ獲得が可能となった。免疫組織学的実験、DNA修復酵素発現の解析は従来の実験方法を用いて継続中である。
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今後の研究の推進方策 |
骨ー軟骨一体化組織の入手と、メカニカルストレス負荷培養実験系の更なる確立を目指す。可能であれば、工学系を専門としている研究機関へ相談し、装置の開発を進めていきたい。もしこれらが予定通りの方向へ行かなければ、既に実験系が確率し実用化されている、細胞培養・進展圧縮装置を用いて研究を遂行する予定である。半月板細胞と軟骨細胞に対して、OA誘導因子を加えた細胞培養下において、DNA修復酵素(APEX-2、ogg1)の発現とその変化をRNAレベル(real -time PCR)及びproteinレベル(Western-blotting法)で検証を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際変形性関節症学会OARSI2016(オランダ/アムステルダム)への参加発表が決定していたが、近隣ベルギーでの国際テロ事件の発生のために、出発直前での学会参加を取りやめたため経費の使用が生じなかった。また、実験装置の開発(デザイン、開発企画など)へ重点的に時間を費やしていたため、分子免疫学的実験の経費がかからなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
軟骨細胞と半月板細胞のDNA修復酵素発現(APEX-2,ogg1)と、OA誘導因子存在下の各細胞内の活性酸素種の産生量測定、フローサイトメトリーを用いて測定を進めたい。さらにメカニカルストレス負荷細胞培養装置を確立させ、骨軟骨組織一体化サンプルを手に入れて、負荷試験を進めていく予定である。
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