研究課題/領域番号 |
16K10923
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
赤木 將男 近畿大学, 医学部, 教授 (00273441)
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研究分担者 |
井上 紳司 近畿大学, 医学部, 講師 (10642879)
墳本 一郎 近畿大学, 医学部, 助教 (20770051)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 生活習慣病 / 局所性レニン・アンギオテンシン系 / 変形性関節症 / 軟骨変性 / 加齢 / 機械的ストレス |
研究実績の概要 |
1)C57/BL6マウスの膝内側半月不安定化(DMM)OAモデルを用いて、膝関節軟骨変性の進行とAT1Rの発現状況を組織学的に検討した。DMMマウスでは経時的に関節軟骨変性を示すマンキンスコアの上昇を認めた。また、経時的にAT1R陽性細胞率とX型コラーゲン陽性細胞率の上昇を認めた。マンキンスコアの上昇とAT1R陽性細胞率およびX型コラーゲン陽性細胞率の上昇には有意な相関を認めた。マンキンスコアとX型コラーゲン陽性細胞率/AT1R陽性細胞率には有意な正の相関を認めた。また、AT1R陽性細胞率とX型コラーゲン陽性細胞率の間に強い正の相関を認めた。一方、コントロールマウスではAT1RとX型コラーゲンの発現は認めなかった。以上より、軟骨組織に対する過剰な運動負荷がAT1Rの発現を促し、AT1Rの発現はさらに軟骨細胞の肥大分化を促す可能性が示唆された。 2)軟骨細胞上に発現するAT1R機能をin-vitroで解析するために、ウシ関節軟骨細胞を3次元培養した。まず、培養軟骨細胞のAT1R発現を確認した。この軟骨細胞に周期的圧迫負荷を加えた群、アンジオテンシンIIを加えた群、ARBを加えた後に周期的圧迫負荷を加えた群について、RT-PCRおよびウェスタンブロットを用いてX型コラーゲンおよびRunx2発現を調べた。さらに、これらの刺激が細胞内にシグナルを伝達するか、すなわち、G-蛋白依存性経路、非依存性経路のシグナル蛋白のリン酸化を行うか、微量蛋白定量装置(Bioplex)を用いて検討した。その結果、アンジオテンシンII添加および周期的圧迫負荷によりX型コラーゲンおよびRunx2発現は上昇し、ARBは圧迫負荷によるこの効果を抑制した。また、ARBは圧迫負荷によるG蛋白依存性シグナル伝達を抑制した。これらの結果は上記のin-vivoでの観察結果を支持するものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下記の如く、研究の進捗状況はやや遅れているものの、ほぼ予定通りと考えている。 マウスDMMモデルを用いた研究では、予想通りの結果が得られた。すなわち、軟骨組織におけるAT1R発現、OAの進行(マンキンスコアによる評価)および軟骨細胞の肥大分化(X型コラーゲンの発現)の間には有意な相関が認められ、AT1Rの発現はOAの進行に関与する可能性が示唆された。また、正常な関節軟骨細胞ではAT1Rの発現を認めないことより、軟骨組織における過剰な力学的負荷がAT1R発現を誘導するものと思われた。Flexercell (FX)-4000を用いて周期的圧迫負荷(機械的ストレス)を3次元培養軟骨細胞に加えるin-vitro実験でも、AT1RはリガンドであるアンジオテンシンIIとともに、機械的ストレスにより活性化し、軟骨細胞内にシグナル伝達を行うことが明らかになった。すなわち、軟骨変性にともない発現誘導されるAT1Rはメカノセンサーとして機能し、軟骨細胞の肥大分化を促進する役割を果たしていることを示す結果であった。上記の結果は、FEBS Open Bio に投稿し受理された。長期飼育による局所RASの活性化が加齢関連膝関節OAに与える影響については標本を蓄えている段階で、解析を始めることが出来ていない。
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今後の研究の推進方策 |
AT1Rブロッカー(ARB)を用いて、in-vivoにおいて軟骨細胞の肥大分化、すなわち、軟骨変性の抑制が可能かどうか、今後検討する。また、つくば高血圧マウス(THM)に走行負荷を加えた研究においても実験データが揃いつつあるので、英文誌に公表する予定である。さらに、加齢関連膝関節OAと局所RASについても研究を進めてゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
卓上小型遠心機について当初購入予定のものから機種変更し予算額を下回る価格となったため。平成29年度未使用額は、平成30年度マウス飼育費等に使用予定である。
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