研究実績の概要 |
近年、糖・脂質代謝異常と筋骨格系異常の罹患者が共に急増しており、これらの疾患の双方向の関連性が注目されている。本研究では、これらの疾患の相互関連性における筋肉、骨、肝臓などを中心とする臓器ネットワークの破綻を介した新たな分子機序の解明を目的としている。本年度は、糖尿病病態に伴う筋萎縮と骨粗鬆症における筋-骨連携の破綻の役割と、その破綻におけるビタミンD欠乏の関与についてストレプトゾトシン誘導性糖尿病モデルマウスを用いて検討した。糖尿病マウスでは、健常マウスに比較して筋量が減少したが、ビタミンD欠乏によりその減少が増強された。糖尿病マウスの腓腹筋における筋分解マーカー(MuRF-1, Atrogin1)の増加が、ビタミンD欠乏によって増強したことから、筋分解の亢進がビタミンD欠乏による筋量減少を増強する機序として考えられた。また以前、ビタミンD欠乏が糖尿病に伴う骨量減少を増強することを報告した(Bone. 61:102-108, 2014)。本研究において糖尿病マウスの腓腹筋では、健常マウスの腓腹筋と比較して、筋由来骨形成促進因子(IGF-1、FGF-2、TGF-β、Irisin)のmRNA量が減少しており、さらに、ビタミンD欠乏によって糖尿病に伴うIGF-1およびFGF-2の mRNA量の減少が増強された。このことから、糖尿病病態において、筋と骨の臓器連携の破綻を介して骨粗鬆症が引き起こされる可能性と、ビタミンD欠乏が糖尿病に伴う筋-骨連携の破綻を増強することが示唆された。本年度の研究成果より、糖尿病病態における筋骨格系異常に筋と骨の臓器連携の破綻が関与しており、さらにビタミンDが筋-骨連携の維持に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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