研究課題/領域番号 |
16K10924
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
田村 行識 神戸学院大学, 栄養学部, 講師 (40580262)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | グルココルチコイド / 筋骨格系異常 / PAI-1 / 筋-骨連携 |
研究実績の概要 |
本年度は、主にグルココルチコイド(GC)投与によって引き起こされる筋骨格系異常の機序について検討を行った。私共はこれまでに線溶系阻害因子Plasminogen Activator Inhibitor-1(PAI-1)欠損マウスでは、野生型マウスと比較してGC過剰による筋萎縮と骨粗鬆症が軽減されることを示してきた(Diabetes 2015)。そこで、本年度はGC過剰による筋萎縮にPAI-1が関与する機序の詳細と、筋-骨連携の破綻に対するPAI-1の関与について検討を行った。野生型マウスで、Corticosteroneの4週間持続投与により筋量が減少した腓腹筋では、PAI-1と筋分解因子(Atrogin-1,MuRF-1)の 発現(mRNA量)が有意に増加した。一方、PAI-1遺伝子欠損マウスではGCによる筋分解因子発現の増加がみられなかった。Dexamethasone(Dex)投与はマウス筋芽細胞株C2C12細胞における筋分解因子発現を増加させたが、PAI-1の同時投与はDexの作用をさらに増強した。さらに、siRNAによる内因性PAI-1発現の抑制は、Dex投与による筋分解因子発現増加を抑制した。これらのことから、筋の内因性PAI-1の増加がGC過剰による筋分解に関与することが示唆された。一方、C2C12細胞において、Dexによる筋蛋白合成低下および筋分化抑制におけるPAI-1の関与は認められなかった。次に、マウス腓腹筋において、骨に影響をおよぼすマイオカインのmRNA量を検討したところ、PAI-1遺伝子欠損はGC投与によるIGF-1 発現抑制を有意に回復した。本研究成果より、GC過剰はPAI-1を介して筋分解を促進することにより筋萎縮をおこすこと、またGC過剰はPAI-1を介して筋組織のIGF-I発現を抑制することで、筋-骨連携の破綻を増強している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、糖尿病に伴う筋骨格系異常の機序について明らかにし、本年度はグルココルチコイド投与に伴う筋骨格系異常の分子機序の一端を明らかにすることができた。当初の実験計画から一部前後して実験を実施した部分があるが、研究全体としては順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、糖尿病およびグルココルチコイド投与に伴う筋骨格系異常におけるPAI-1の役割について骨欠損モデルなどの動物モデルを用いてさらに明らかにする。また、糖尿病およびグルココルチコイド投与に伴う筋萎縮と骨粗鬆症を相乗的に改善する栄養学的予防法の探索を行っていく予定である。具体的には、筋肉と骨の両方に作用する微量栄養素であるビタミンDと亜鉛に着目し、これらの投与が病態に及ぼす効果と筋-骨連携に及ぼす影響について、動物レベルおよび細胞レベルにおいて検討する。以上のように、筋骨格系異常が引き起こされる分子機序のさらなる解明と病態の予防・改善法の探索を並行して行う予定である。
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