研究課題
平成28年度は、c-fos遺伝子にenhanced Green Fluorescent Protein(eGFP)遺伝子をトランスフュージョンさせたc-fos-eGFPトランスジェニックラットを用いて膝関節炎モデル(単関節炎モデル)を作成した。齧歯類において、その投与により局所炎症を惹起することが知られている海藻由来成分のカラゲニンを用いて3%カラゲニン溶液を作成し、成熟雄性c-fos-eGFP トランスジェニックラット(体重430-670g)の右膝関節内に100μL投与した。投与前、投与後6時間および 投与後24時間で膝関節横径を計測し、投与前と比較した投与後の増加量を指標に関節炎の程度を評価した。その結果、投与6時間および24時間後において、右膝関節横径は投与前と比較して有意な増加を認め、3%カラゲニン溶液の膝関節内注射により膝関節炎が惹起されることを確認できた。また、3%カラゲニン溶液の膝関節内注射24時間後にラットを灌流固定して脳および脊髄を採取し、ミクロトームを用いて視床下部視索上核(SON)、視床下部室傍核(PVN)および 第 4 腰髄(L4)レベルの脊髄後角を含む 厚さ30μmの切片を作成し、蛍光顕微鏡((DS-QiMc (Nikon))を用いてeGFPの発現を観察した。また、対照群として成熟雄性c-fos-eGFPトランスジェニックラット(体重 430-670g)の右膝関節内に100μLの生理食塩水を注射し、上記と同様にeGFPの発現を観察した。その結果、3%カラゲニン関節内投与24時間後では、観察したすべての領域で、膝関節炎群におけるeGFP陽性細胞数の有意な増加は認めなかった。現在、投与後6時間後でのeGFPの発現増加の有無を確認中である。
3: やや遅れている
計画初年度は、c-fos-eGFP トランスジェニックラットを用いて膝関節炎モデルを作成した。しかし、当初計画していた、脳および脊髄における c-fos-eGFP の蛍光発現の観察や c-fos mRNA の定量評価に至っていない。
次年度 (平成 29 年度) においては、c-fos-eGFP トランスジェニックラットを用いて膝関節炎モデルを作成し、脳および脊髄における c-fos-eGFP の蛍光発現の観察や c-fos mRNA の発現を調べることを予定している。また、モノヨード酢酸 (MIA) の関節内投与による変形性関節症モデルラットの作成を行う予定である。本研究の成果は、日本生理学会、日本整形外科学会などの国内学会および国際学会に発表し、国際専門誌に英文論文として発表する予定である。
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