研究実績の概要 |
成熟雄性Wistar系ラットを用いて右膝関節内に3%カラゲニン100 μLを投与し単関節炎モデルを作成し、投与後3、6および12時間でvon Freyテストによる痛覚閾値の確認、免疫組織学的染色法による視床下部および第4腰髄(L4)におけるFos陽性細胞数を確認した。その結果、痛覚閾値はカラゲニン投与後3および6時間では対照群と比較し有意に低値であったが、12時間では回復傾向であった。視床下部におけるFos陽性細胞数はカラゲニン投与後3および6時間で対照群と比較し有意に高値であったが、12時間では対照群と同等の値まで低下していた。L4におけるFos陽性細胞数はカラゲニン投与後3、6および12時間で対照群と比較し有意に高値であったが、12時間ではかなり減少していた。カラゲニン投与後3および12時間でオキシトシン(OXT)ならびにバゾプレッシン(AVP)ニューロンにおけるFos陽性率を測定したところ、両ニューロンともカラゲニン投与後3時間では対照群と比較し有意に高値であった。続いて、カラゲニン投与後2および6時間でラットを断頭し、視床下部および下垂体前葉を含む脳切片を作成し、in situハイブリダイゼーション法を用いてOXT mRNA, AVP hnRNA, CRH mRNA, POMC mRNAの発現レベルを測定した。また、断頭で得られた血液中のOXT, AVP, コルチコステロン(CORT)濃度を測定した。その結果、OXT mRNA, AVP hnRNA, CRH mRNA, POMC mRNAの発現レベルと血中OXT, AVP, CORT濃度はカラゲニン投与後2および6時間とも対照群と比較し有意に高値であった。以上から、関節炎に対する抗侵害受容ならびに抗炎症作用のためにオキシトシン、バゾプレシン、CRHニューロンが一斉に活性化したと考えられた。
|