研究課題/領域番号 |
16K10928
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
里元 麻衣子 東邦大学, 医学部, 講師 (10611551)
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研究分担者 |
槇田 浩史 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (20199657) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 神経炎症 / 認知機能障害 / セボフルラン / 脳 |
研究実績の概要 |
2017年度に査読付き英文雑誌に敗血症性関連脳症のモデルマウスを作成し、全身性炎症から脳内炎症が引き起こされ、脳内炎症は急性の認知機能障害を引き起こすこと、認知機能低下を防止するためにセボフルランを短時間投与しておくことで炎症が抑えられ、急性の認知機能障害を予防できるということを報告した。 上記内容を発展させ、2018年には、マウスモデルにおいて、脳血液関門が脆弱な時期に麻酔薬に曝露させることで、脳の血液脳関門が壊れていくことを電子顕微鏡で確認し、その状態は通常脳へ到達しないとされる薬剤の脳内への移行を示唆する研究結果を得て、その結果を英文査読付き雑誌2社に投稿し受理された。要旨を簡単に示す。 げっ歯類において、生後脳の成長発達期への麻酔薬であるセボフルラン曝露は脳神経のアポトーシスを誘発し、成長後の学習障害をもたらす。 吸入麻酔薬や静脈麻酔薬が脳内の神経細胞に神経毒をもたらす一方、他の薬剤の透過性に影響を与えていないかどうかという疑問を持った。我々は脳血液関門に麻酔薬が何らかの形態学的変化を起こすか確認するため、脳の超微細構造を透過型電子顕微鏡によって調べた。 2%セボフルランに6時間曝露させると、生後6日齢マウスの海馬脳血液関門に超微細構造異常が生じた。これは2時間4時間と麻酔時間が延長するごとに脳の微細構造は悪化していった。また、この変化が可逆的か非可逆的かということも確認した。麻酔終了後24時間48時間で次第に脳の微細構造は改善を示しており、可逆性であることが分かった。この変化は脳の成長発達期を追えた生後16日齢のマウスおよび生後8週間のマウスでは、2%セボフルランに曝露させても脳の微細構造に変化は起きなかった。2%セボフルランに6時間さらすと、生後6日齢マウスの海馬の脳血液関門に形態学的変化が生じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的である、敗血症性関連脳症の病態機序の解明及び治療薬の検討については学会発表英文雑誌等一通りの成果を得た。そこから発展させた脳血液関門の微細構造の変化について、2018年度に2本の英文を発表できた。この内容を学会等で発表することを考えており、2019年に予算を少量残している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で得た知見をさらに発展させ、どのような薬剤が実際に脳内に移行するのかということを調べていきたい。一般に市販されている薬剤でも思わぬ作用を来すことは多数報告されており、使用する患者のコンディションや他薬剤との併用により脳への作用が減弱もしくは増強していることを動物実験を中心に進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果を発表するための時間がとれず、国内国外での情報収集及び学会発表のための旅費や参加費として使用を検討している。
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