研究課題/領域番号 |
16K10929
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
木戸 浩司 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 医員 (60772621)
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研究分担者 |
槇田 浩史 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (20199657) [辞退]
内田 篤治郎 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (40262183)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | プロポフォール / 毒性評価 |
研究実績の概要 |
プロポフォール注入症候群(PRIS)の病態に関しては、症例報告や動物実験を通じて検討されており、エネルギー代謝障害が主な要因であると提唱されている。しかし、その機序は完全には解明されておらず、特に正常ヒト細胞に対する評価は十分とは言えない。そこで我々は、PRISの主要標的臓器として心筋が挙げられることから、ヒト人工多能性幹細胞(iPSC)由来心筋細胞を用いてプロポフォール高用量・長時間曝露による影響を検討した。 ヒトiPSC由来心筋細胞に対し、プロポフォール(0,2,10,50μg/ml)を48時間曝露した後、細胞傷害に関する指標[生細胞プロテアーゼ活性(細胞生存率)、カスパーゼ3/7活性、オートファジー活性]、エネルギー代謝関連の指標(ATP、培地中の乳酸値、ミトコンドリア活性)の測定と関連遺伝子の発現を検索するため、PCR-Arrayを施行した。統計学的検討にはDunnettの多重比較検定を行い、P < 0.05を有意とした。 10μg/ml以上の群において有意に、細胞生存率・ATP産生・NAD+/NADH比・ミトコンドリア膜電位の低下とオートファジー活性の上昇を認め、50μg/ml 群における細胞生存率は20.7%低下した(P < 0.05)。また、ミトコンドリア呼吸鎖の構造タンパク遺伝子(NDUFS8、SDHB)の有意な発現低下を認めた。プロポフォール50μg/ml群において、共焦点顕微鏡観察では多数のオートファジー空胞を認め、電子顕微鏡所見では、ミトコンドリアの分裂像、オートファゴソーム像、細胞質内の空胞を認めた。 プロポフォールの高用量・長時間曝露により、オートファジー反応の増加を伴う心筋細胞死が認められ、原因の一つとして呼吸鎖タンパク遺伝子の発現低下を伴うミトコンドリア機能の低下が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心筋細胞を用いた研究プロトコールにおいて、計画された実験の施行を完了した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、iPS細胞由来の肝細胞を用いて、同様のメカニズムが働いているかどうかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験が順調に進行し、若干の剰余金が発生した。2018年度分に繰り越し、培地購入費用や、成果発表のための英文校正などの資金として活用する予定である。
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